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ドローンと航空法(改正航空法対応版)

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ドローンと言えば少し前までは軍事用のイメージが強かったのですが、近年では民間にもマルチコプタードローンが急速に普及し、その言葉をよく聞くようになってきました。ドローンは無人航空機全般を指す言葉で、無人標的機や無人偵察機など主に特定のミッションを行うための軍用のものがドローンと呼ばれていました。近年見るようになったラジコンマルチコプターがドローンと呼ばれるのは、高度な制御システムによって半自律的、あるいは自律的に飛行させることが可能となったことで、従来のホビー用ラジコンヘリのように飛ばすことだけを目的とするのではなく、特定の目的に沿ったミッションを容易にこなせるようになったためです。例えば日本でもTV局が空撮用マルチコプタードローンを運用するようになったり、海外ではAmazonがマルチコプタードローンによる宅配便を計画していたりしています。

個人向けにもアクションカメラを搭載できる安価なクアッドコプターが普及し、初心者でも手軽にドローンによる空撮などが行えるようになってきています。しかしながら、国内では航空法により飛行可能な高度や場所が定められており、これを守らないと法令違反になるばかりか下手をすれば大事故に繋がる可能性があります。実際米国ではドローンと旅客機がニアミスするという事案が起きており、国内ではドローンによる航空法違反により書類送検されたという事例が起こっています。

2015年4月には首相官邸にドローンが墜落するという事件が起き、その後も各地でドローンの墜落が相次いだことから、ドローンに対する法整備が急ピッチで進められることとなります。 そして2015年12月10日より改正航空法が施行されることとなり、今まで曖昧となっていたドローン等無人航空機に関する条文が追加され、より具体的な規制が行われることとなりました。航空法の第九章には無人航空機という項目が追加され、省令である航空法施行規則もそれに合わせて改正されました。

このページではドローンを飛ばす上で絶対に知っておくべきである航空法について詳しく解説していきます。改正航空法については国土交通省航空局HPにも各種情報が記載されているので合わせて見てみると良いと思います。


無人航空機
まずは航空法で言う無人航空機とは何かですが、航空法第2条22及び航空法施行規則第5条の2で規定され「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(200g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)」というもので、これはマルチコプタードローンだけでなく、従来のラジコンヘリやラジコン飛行機のほとんどが該当します。重量200g以下のおもちゃ屋で売っているような小型のマルチコプタードローン等は従来の航空法の「模型飛行機」に該当し今回の法改正の影響は受けません。



それでは航空法第九章 無人航空機の項目を見ていきましょう。


航空法及び航空法施行規則

1.飛行禁止区域

航空法 第九章 無人航空機

第百三十二条(飛行の禁止空域)


何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。

一  無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域

二  前号に掲げる空域以外の空域であつて、国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域の上空


航空法132条では無人航空機の飛行禁止空域を定めており、1項では空港周辺の空域及び一定以上の高度での飛行、2項で人口集中地区での飛行の禁止を定めています。1項は概ね改正前の飛行禁止空域と同様ですが、2項は今回新たに設定されたものです。ここに出てくる国土交通省令で定める空域の詳細が航空法施行規則236条に定められています。


航空法施行規則

第二百三十六条 (飛行の禁止空域)


法第百三十二条第一号の国土交通省令で定める空域は、次のとおりとする。
進入表面、転移表面若しくは水平表面又は法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域

二 前号に掲げる空域以外の空域であつて、地表又は水面から百五十メートル以上の高さの空域

第二百三十六条の二

法第百三十二条第二号の国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域は、国土交通大臣が告示で定める年の国勢調査の結果による人口集中地区(地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通大臣が告示で定める区域を除く。)とする。


航空法施行規則236条で定められた空港周辺の空域150m以上の空域、及び人口集中地区では航空法132条により無人航空機の飛行を禁止しています。


▲飛行禁止区域概要(国土交通省航空局)

この中で我々がドローンを飛行させる上で最も影響があるのが航空法施行規則236条2の国勢調査の結果による人口集中地区での飛行の禁止です。人口集中地区とは人口密度が1平方キロメートルあたり4000人以上の地区のことで、 平成27年国勢調査人口集中地区境界図にて大体の範囲を見ることができます。各県の県庁所在地や東京23区などはほぼ人口集中地区であり、この範囲では許可無く無人航空機を飛行させることは出来ません。人口集中地区ではたとえ家の庭など私有地内であっても屋外での飛行は許可を取らなければ違法となります。


▲全国の人口集中地区

人口集中地区をより詳細に確認するには総務省統計局の地図による小地域分析(jSTARTMAP)を使います。使用方法はまずお試し版をクリックして見たい地域を選びます。その後地図画面で右上の行政界のプルダウンメニューから人口集中地区を選択すれば、赤色で人口集中地区の範囲が表示されます。


▲総務省統計局地図による小地域分析(jSTARTMAP)

空港周辺の空域についてはページ下部で解説します。

続いては無人航空機の飛行方法についてです。

2.飛行方法

航空法 第百三十二条の二(飛行の方法)

  無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。ただし、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、次の各号に掲げる方法のいずれかによらずに飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないことについて国土交通大臣の承認を受けたときは、その承認を受けたところに従い、これを飛行させることができる。

一  日出から日没までの間において飛行させること。
二  当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること。
三  当該無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に国土交通省令で定める距離を保つて飛行させること。
四  祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること。
五  当該無人航空機により爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通省令で定めるものを輸送しないこと。
六  地上又は水上の人又は物件に危害を与え、又は損傷を及ぼすおそれがないものとして国土交通省令で定める場合を除き、当該無人航空機から物件を投下しないこと。


航空法132条2では無人航空機の飛行方法について規定されています。

1項では日中の飛行を定めており、夜間に飛行させる事はできなくなりました。ここで言う「日出から日没までの間」とは、国立天文台が発表する日の出の時刻から日の入りの時刻までの間となり、地域によって多少差があります。

2項では目視により常時監視できる範囲での飛行を定めており、操縦者が見えない範囲での飛行は禁止されました。なお、補助者による監視や双眼鏡による監視も対象外で、操縦者が直接監視する必要があります。日中にマルチコプタードローンを目視できるのは概ね300m程度が限界と思われます。

3項では飛行させる無人航空機が人や物件と衝突することを防止するた め地上または水上や人や物件から一定以上(30m)距離をとって飛行させることを規定しています。国土交通省令で定める距離というのは航空法施行規則236条の4により定められ、30mとされています。

ここで言う物件とは具体的には
a)車両等:自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン 等
b)工作物:ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電 線、信号機、街灯 等
が該当します。

下記のような物は保護すべき物件には該当しません。
a)土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道 の線路等であって土地と一体となっているものを含む。)
b)自然物(樹木、雑草 等) 等

4項はイベント等人が多く集まるような場所の上空での飛行を禁止しています。過去にそのような場所でマルチコプターを飛行させ、墜落させたという事件があり、それを受けての規定となります。

5項では無人航空機による危険物の輸送禁止を規定しています。具体的には航空法施行規則194条に規定される火薬類、高圧ガス、引火性液体、可燃性物質類、放射性物質、銃器、刀剣等が該当します。

なお航空法施行規則第236条5の2項にて「前項の規定にかかわらず、無人航空機の飛行のため当該無人航空機で輸送する物件は、法第百三十二条の二第五号の国土交通省令で定める物件に含まれないものとする。」とあり、次のようなものは輸送禁止から除外されます。
・無人航空機の飛行のために必要な燃料や電池
・業務用機器(カメラ等)に用いられる電池
・安全装備としてのパラシュートを開傘するために必要な火薬類や高圧ガス 等

6項では無人航空機からの物件を投下を禁止しています。地上の人等に危害をもたらす恐れがあるとともに、物件投下により機体のバランスを崩すなど無人航空機の適切な制御に支障をきたすおそれがあるためとされています。水や農薬の散布等もこれにあたるため、農業用無人航空機を運用する場合でも国土交通大臣の承認が必要となります。一旦着地してから地上に物体を置くといった場合は132条の2第6項の物件の投下には該当しません。


▲承認が必要となる飛行の方法(国土交通省航空局)


ドローンを飛行させる際は上記航空法132条の飛行禁止空域及び132条2飛行の方法を順守して運用する必要があります。これらを守らずドローンを飛行させた場合、航空法第157条4にて50万円以下の罰金が課せられます。なお、132条の3にて捜索、救助等のための特例が規定されていますが、趣味で飛ばす限りではあまり関係がないためここでは省略します。


許可・承認手続き
航空法132条の飛行禁止空域で飛行させる場合、空港周辺の空域や150m以上の高度の場合は空港事務所長、人口集中地区などでは国土交通大臣の許可が必要になります。また、航空法132条2飛行の方法に合致しない飛行方法を取る場合(夜間飛行やイベント等の上空での飛行など)は国土交通大臣の承認を得る必要があります。

許可・承認の申請書については、飛行開始予定日の少なくとも10日前までに郵送などで提出する必要があります。詳しくは国土交通省HPを参照してください。


空港周辺の空域
続いて空港周辺の空域について解説します。空港近辺に住んでいる人以外はあまり関係がないので先程は飛ばしましたが、空港周辺では距離によって厳しく飛行高度が制限されています。

航空法施行規則236条に書かれている進入表面、転移表面、水平表面、延長進入表面、円錐表面、外側水平表面は空港近辺に存在するエリアで、航空法132条にてこのエリアの上空で無人航空機を許可無く飛ばすことが禁止されています。また、航空法の第99条の2により模型飛行機の飛行も禁止されているため、この範囲上空では改正航空法対象外の重量200g以下のおもちゃのドローン(マルチコプター)のようなものも飛ばすことは出来ません。

この内の進入表面、転移表面、水平表面どの空港にも存在しますが、延長進入表面、円錐表面、外側水平表面については空港によって存在したりしなかったりしていて、範囲もまちまちなので、個別に調べる必要があります。これらのエリアは総称して制限表面と呼ばれており、具体的にどのような範囲かは下の画像を見ていただくと分かりやすいと思います。


成田国際空港株式会社HPより制限表面概略図

上図の範囲は成田空港のものですが、範囲は空港によって違います。例えば水平表面の範囲は空港の滑走路の長さによりAからJまでの等級によって定められており、最大で半径4km、最小で半径800mとなります。また、延長進入表面などは滑走路の片側だけ存在するというケースも有ります。上図の成田空港の制限表面の範囲はいずれも航空法における最大値となっています。

制限表面のうち、延長進入表面、円錐表面、外側水平表面は空港法第4条で規定される拠点空港と呼ばれる比較的大きい空港にのみ設定されており、国際空港である成田、羽田、伊丹、関空、セントレア及び地方空港の一部に設定されています。


▲等級による水平表面の範囲

制限表面上空でのドローンの飛行はできませんが、逆に言えば制限表面より低ければ空港周辺でも飛行させることが可能で、例えば赤色の水平表面の範囲内では高さ45mまではドローンを飛行させることが可能です(人口集中地区を除く)。ただ、DJI PhantomシリーズやWalkera X350シリーズなどの350サイズのクアッドコプターの場合、45m程度はあっという間に到達するため、テレメトリシステム等でドローンの高度を知る手段がない限りはこの範囲で飛ばすことは避けるべきです。Phantom3Bebop Droneなどでは気圧高度計とINUによる高度データをテレメトリによりリアルタイムに知ることが出来るので、注意しながら飛ばすことは可能と思われますが、フライアウェイの危険性を考えるとあまり近い所は避けたほうがいいでしょう。 ちなみに、Phantom2シリーズは特定の空港付近では飛行制限がかかる機能が標準で有効となっています。しかしながら、日本の空港は全て登録されてるわけではないため、あまりこの機能は当てにせず、事前に飛行できる場所かどうかや制限高度を確認しておきましょう。

ここでいくつかの空港の制限表面の例を見てみます。

愛知県HPより

上図は県営名古屋空港の制限表面の範囲を示しています。名古屋空港では水平表面、進入表面、転移表面が設定されており、延長進入表面、円錐表面、外側水平表面は存在しません。大部分を占めている水平表面は空港の標点から高さ45m、半径4kmの範囲です。標点というのは滑走路の中心を指します。進入表面は着陸帯の端から3kmのスロープ状になっており、3km地点での高さは60mとなります。


成田国際空港株式会社HPより

上図は成田空港の制限表面を示しており、真ん中の赤い円が水平表面、黄色い円が円錐表面、緑の円が外側水平表面です。名古屋空港とは違い、延長進入表面、円錐表面、外側水平表面が設定されており、その範囲が非常に広大であることが分かります。この内の緑色の線の外側水平表面は高さが295mあるのでドローンを飛行させる上で基本的に気にする必要はありません。(ドローンの飛行制限高度が150mのため)

また、滑走路が3本あるため、進入表面も滑走路の数だけ存在しています。このように滑走路が3本ある場合の標点は3本の滑走路の重心の位置に設定され、そこから水平表面が4km、円錐表面が16.5km、外側水平表面が24kmの範囲に設定されます。進入表面や延長進入表面は標点は関係なく、着陸帯の端からそれぞれ3km、15kmに設定されています。



成田国際空港株式会社HPより断面概略図


東京航空局HPより羽田空港の制限表面

上図は羽田空港の制限表面を示した図です。最も内側の赤い円が半径4kmの水平表面です。その外側には成田空港同様に延長進入表面、円錐表面、外側水平表面が設定されていますが、延長進入表面は滑走路の片側のみで、円錐表面及び外側水平表面は高層ビルの立ち並ぶ都心部を避けるように特殊な範囲設定となっています。

その他の国が管理している空港の制限表面は各航空局HPで参照することが出来ます。
東京航空局
大阪航空局
それ以外の空港については個別に調べてみてください。

ここまで空港の制限表面の例を見てきましたが、空港以外にも自衛隊の基地や民間の小さい飛行場などにも制限表面が存在します。
下図は航空自衛隊入間基地の制限表面を示した図です。

狭山市HPより入間飛行場の制限表面

入間基地では名古屋空港同様に水平表面、進入表面、転移表面のみが設定されています。最も大きい青色の部分が水平表面で、半径3kmの範囲となっています。高さは海抜135mとなっていますが、入間飛行場の標点の標高が90mなため、他の空港と同様に標点から45mです。
基本的には自衛隊の基地・飛行場では延長進入表面、円錐表面、外側水平表面は設定されていません。ただし、拠点空港である那覇空港と共用している那覇基地においては存在しています。

なお、米軍の飛行場については国内航空法の対象外のため、制限表面も告示されていません。米国航空法(FAR)が適用される可能性もありますが明確になっていないため不明です。いずれにせよ近くでの飛行は避けた方が良いと思われます。



このようにドローンを飛行させる際は航空法に従って適切な高度を順守させる必要がありますが、ドローンの高度が分からなければ気付かずに制限高度を超える恐れがあります。改正航空法で規定されている制限高度である150mの高度はDJI PhantomシリーズやWalkera X350シリーズなどの350サイズのクアッドコプターの場合すぐに到達します。そのため今からドローンを入手するならば気圧高度計などを搭載し機体の現在高度がテレメトリーで分かる機体をお勧めします。

現在日本で入手可能なテレメトリー搭載型の空撮用のマルチコプタードローンとしてはDJI社のPhantom4(公式HP)、パロット社のBebop Drone(公式HP)があります。これらの機体は高価ですがGPS、INUにより安定した飛行が可能で、それぞれカメラに機械式又は電子式のスタビライザーを搭載しているため空撮用としては最適です。

初めに高度が分かる機体で慣れておくと、後からテレメトリーの無い機体を飛ばしても大体の高度が感覚で分かるようになります。




航空法以外
航空法以外でもドローンの飛行において注意しなければならないことがあります。

民法207条において「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と定められており、私有地の上空にも土地の所有権が及びます。そのため私有地で飛行させる際は厳密に言うと地権者の許可を得る必要があると思われます。

法的に問題がなくても人の多い場所や幹線道路周辺などでは飛行させないようにしましょう。DJI PhantomやWalkera X350などの350サイズのクアッドコプターは重量が1kgを超えます。もしこれが何らかの原因で高度100mから落下し、人に当たるなどした場合怪我では済みません。もし高速道路に落下した場合大事故につながりかねません。

ドローンが高度な制御システムを備えているからといって絶対に落ちないわけではなく、機体のコンディションが万全でも様々な要因でいきなり墜落することがあります。そのため、いつ落ちてもおかしくないということを常に心がけて飛行させるようにしましょう。




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