AIM-9サイドワインダーはアメリカ軍の赤外線誘導式短距離空対空ミサイルであり、世界で最も多く製造された空対空ミサイルでもある。 歴史は意外に古く、今から50年以上前の1949年から開発され、1956年に初期型のAIM-9Bが配備された。1958年、台湾のF-86が中国のMiG-17との交戦時に使用され初戦果を上げたが、11機を撃墜し損害はゼロという花々しい戦果でサイドワインダーの名を世界中に知らしめた。 コストパフォーマンスが高く、性能も良いため世界中の国で使用されており、現在も改良が進められている。 飛翔制御は前方のカナード翼によって行われるが、後部フィンの先端にローレロンと呼ばれるロール制御用の可動部がある。これは可動フィンに取り付けられたローターが空気抵抗で回転することによりジャイロ効果を生み出し、自動的にロール制御を行うというものである。初期型のAIM-9Bから現在も現役のAIM-9Mまでこのローレロンが搭載されている。 ▲後部フィンのローレロン そのほかの特徴としてはサイドワインダーではシーカー部、弾頭部、制御部などそれぞれのブロックがモジュール化されており、改良が容易に出来たことである。そのため今日までに様々な改良型が開発され、これほどまでの発展に繋がった。 初期型のAIM-9Bではシーカーの冷却を行っていなかったため感度が低く、ベトナム戦争では水田に反射した太陽光に反応したサイドワインダーが地面に突っ込むということが多発したそうだが、その後登場したAIM-9Lからは信頼性がかなり高くなった。 航空自衛隊も導入したAIM-9Lでは新型シーカーにより感度が大幅に上がり、太陽光を追いかけるといったことは勿論無くなり、ほぼガンレンジでなければロックオン出来なかった射程距離も大幅に改善した。さらにオールアスペクト能力も得ており、目標の後方だけでなく正面や側面からもロックオンすることが可能となったため、非常に使いやすくなっている。内蔵電子機器はソリッドステート化され、近接信管もアクティブレーザー式に変わり信頼性が向上している。 シーカーの詳細としてはインジウム(In)とアンチモン(Sb)を利用したレティクル走査方式で、周波数は125Hz、変調方式はFMで、シーカーを覆うドームにはフッ化マグネシウムが使用されている。シーカーの冷却にはアルゴンガスが用いられ、ランチャーに搭載されている冷却ボトルにより90分間冷却することが可能。 射程距離は最高のコンディションの場合15〜18kmと言われているが、通常はヘッドオンで5〜8km程度である。敵機後方から発射する場合は3〜5kmだという。運動性としては最大で35Gの旋回性能を有すると言われている。 ▲F-22から発射されるAIM-9Mサイドワインダー さらにサイドワインダーシリーズの最新型として大幅に性能が向上したAIM-9X サイドワインダーが登場しており、広まりつつある。 スペック(AIM-9L)
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