R-73は旧ソ連の第4世代の赤外線誘導短距離空対空ミサイルで、1970年代後期に開発が開始され、1980年代半ばに実用化されたと見られている。NATOコードではAA-11アーチャー(Archer)と呼ばれる。 サイドワインダーの10年先を行くミサイルと言われるほど革新的な短距離ミサイルで、後の西側の短距離空対空ミサイル開発に大きな影響を与えた。 シーカーはフレア耐性の高い二色赤外線センサーが搭載されており、当然ながらオールアスペクト能力を持ち敵機前方からでもロックオンが可能である。 ヘルメット式照準装置との組み合わせによりミサイルの中心軸から最大で±45度離れた目標を捕捉可能で、世界で初めてオフボアサイト能力を得たミサイルである。現在のタイプではオフボアサイト能力は±60度に上昇している。 翼構成としては一番前にある小さな羽根が迎え角検出用のセンサーで、その後ろに固定式の安定翼があり、その後ろに全遊動式のカナード翼、最後に尾翼となっている。尾翼後部にはロール制御用のエルロンが取り付けられている。特筆すべきはこの手のミサイルとしては初めてロケットモーターにスラストヴェクタリング(推力偏向)を搭載したことで、最小旋回半径がAIM-9Mサイドワインダーの1/2という高い旋回能力を得ている。 さらに、AMRAAMのような最近の中距離ミサイルで一般的な慣性誘導装置もこの手のミサイルとしては初めて搭載され、発射後ロックオン(LOAL)が可能となり射程が大幅に伸びているのも大きな特徴である。 ▲ノズル部に備えられた推力偏向機構 スペック(R-73M1)
|