AT4はスウェーデンのFFV社(Förenade Fabriksverken)によって開発された使い捨て式の携行対戦車無反動砲である。同社が開発したカールグスタフ無反動砲と同じ口径84mmの対戦車弾頭を使用していながら、砲身を使い捨てとすることで大幅に軽量化している。FFV社は1991年にボフォース社に買収され、その後1999年にボフォース社もサーブ社に買収され、現在はサーブ・ボフォース・ダイナミクス社が製造・販売を行っている。名称は砲口径の84mmの英語読みであるエイティ・フォーが由来。 Pansarskott m/68使い捨て無反動砲の後継として開発され、1976年に最初のプロトタイプが完成し、1982年にはスウェーデン軍にPansarskott m/86として採用された。1983年には米陸軍及び海兵隊でM72 LAWロケットランチャーの後継としてM136 AT4の名称で採用され、1985年には25万基以上を発注している。その他世界20ヶ国以上で採用されているベストセラー兵器となっている。 AT4は口径84mm、長さ1mのアルミニウム製砲身を持ち、殆どがGFRPで構成されているため、重量は弾薬を含めて6.7kgと比較的軽量である。弾薬はカールグスタフの対戦車弾頭をベースに作られているが、カールグスタフと違って砲身はライフリングが切られておらず、これも軽量化に寄与している。前述のとおり使い捨てであり、弾薬が砲身に装填した状態で製造され、弾薬の再装填は不可能となっている。発射前の砲身内は密閉されており、数時間水に浸した後でも発射可能とされる。 ▲ナイトヴィジョンを取り付けたAT4 ▲弾頭概要 弾体は約290m/sで撃ち出され、発射後に安定翼を展開することで飛翔を安定させる。成型炸薬はライフリングにより弾体を回転させると威力が低下する特性があるため、カールグスタフと違ってHEAT弾以外発射すること無いAT4ではライフリングの無いスムースボアバレルを採用している。 ▲弾頭断面 AT4はカールグスタフと同様のクルップ式無反動であり、発射時には大量の発射ガス(バックブラスト)を放出することで反動を相殺する。そのため、後方90°60mの範囲は危険地帯となっており、発射時は後方の安全を十分に確認しなければならない他、伏せ撃ちする際も体がAT4の後方90°に入らないようにする。このため室内や掩体壕からの発射は不可能であり、後にこの問題を解決したAT4CSが開発されている。 ▲発射時には盛大なバックブラストが発生する AT4は国内外問わずよくロケットランチャーであると勘違いされているが、実際には弾頭は前述の通りロケット弾頭ではなく、ロケットランチャーではない。これにはいくつか理由があるが、カールグスタフの対戦車弾頭がロケットアシスト弾頭であり、それをベースに弾頭が作られていることや、米軍でM72ロケットランチャーの後継として採用されたこと、弾体後尾のトレーサーの発光炎がロケットと見間違われるためと思われる。また、米陸軍の発表でロケット推進弾頭を使用していると記述されたことも間違った認識を広める大きな要因となった。 AT4CS AT4CSは従来のAT4のバックブラストにより閉所からの射撃ができないという欠点を解消したモデルである。CSはConfined Spaceの略で限られた空間という意味。AT4から変わったのが発射方式がクルップ式からデイビス式に変わり、発射ガスの代わりに塩水をカウンターマスとして放出することで反動を相殺する。これによりバックブラストが大幅に軽減し建物内などからの発射が可能となり、近年多発している都市部での戦闘においての運用柔軟性が大幅に向上した。AT4CSでは現在二種類の弾頭が開発・運用されている。 AT4CS HP AT4CS HPはAT4CSの対戦車弾頭型で、HPはHigh Penetrationの略。その名の通り通常のAT4に比べ貫徹力が向上しており、RHA換算で500〜600mmの装甲貫徹力を有する。初速220m/s、総重量7.8kg。 AT4CS AST AT4CS ASTは多発する都市戦闘に対応するため開発された対物用弾頭搭載型で、バンカーや建物に潜む敵を外から攻撃できる能力を有している。ASTはAnti Structure Tandemの略。 弾頭は先頭にHEAT弾頭、後方にHE弾頭というタンデム式となっており、HEAT弾頭により壁に穴を開け、その後HE弾頭が突入し建物内部に敵に被害を与える。また、信管は二つのモードがあり、主弾頭のHE弾頭を着発または遅延動作させることが可能で、着発モードでは壁に人が通れるサイズの穴を開ける事もできる。初速205m/s、総重量8.9kg。 |