ゲパルトはドイツのクラウスマッファイ社によって開発された自走式対空機関砲で、アメリカ製のM42ダスター自走高射機関砲の後継車両として1965年から開発が開始され、1973年に正式化された。 コンピューター制御による高度なレーダー照準により、3kmの低空域では最新鋭のジェット戦闘機でも無傷で通過するのは極めて困難だと言われている。 車体は当時正式化されたばかりのレオパルド1の物を流用し、箱形の砲塔の左右に35mm機関砲2門、前後にレーダーという特徴的な形状を持っている。 車体左前部には発電用のダイムラー製OM314水冷ディーゼル発電機(66kW)を搭載しており、これらの機材を追加したため、車体装甲を削ったにもかかわらず重量は47.5トンに達している。この発電機によりコンピュータなどに使用する大電力を賄っている。 砲塔両側にエリコン製KDA90口径35mm機関砲を装備しており、1門あたり対空用のHEI弾(焼夷榴弾)、半徹甲HEI弾320発と対地用徹甲弾(APDS)20発が用意されている。 発射速度は1門あたり毎分550発、20-40発のバースト射撃が行われる。90口径という長い砲身により最大射程は4000mで、砲口初速は対空用HEI弾で1175m/s、対地用APFSの場合1385m/sを誇り、改修型に搭載されるFAPDS弾(新型装弾筒付き徹甲弾)では1400m/s以上だという。 砲塔前部には皿形のSバンド追尾レーダーを、後部にはレーザー測距機付きKuバンド捜索レーダーを搭載し、バックアップとして光学照準システムも用意されている。レーダーは両方とも探知距離15km程度で、捜索レーダーは1秒間で一回転し全周捜索する。 追尾レーダーで1目標を追尾しながら捜索レーダーでの他目標の捜索も可能となっており、リアクションタイムの短縮につながっている。 射撃統制にはアナログ式コンピューターが使用されていたが、近代化改修により最新のデジタルコンピューターによる射撃統制装置が搭載された。 小型化されたデジタル・コンピュータは、モトローラ社製32ビット68020マイクロプロセッサーと演算用コプロセッサーを持ち、C3(指揮、統制、通信)用インターフェイスを備える。さらにGPSやデータリンクシステムも搭載され冷却性能も向上している。 これらによりリアクションタイムの短縮化や命中精度の向上などが図られている。 また最近ではヘリコプターなどの対地ミサイルの射程が上がり、4000mの射程しか持たないゲパルトはアウトレンジされる可能性が高くなったため、機関砲の外側にスティンガーミサイルを搭載したタイプも開発されている。 ▲スティンガーミサイル搭載型ゲパルト ゲパルトはドイツ陸軍で432両が採用されており、ドイツの他ベルギー、ルーマニア、オランダにも輸出されている。オランダ軍仕様ではレーダーがオランダ製のパルス・ドップラー・レーダーに換装され、追尾レーダーがXバンドに、捜索レーダーはX/Kaバンドに換装され形状も長方形に変わっている。砲塔側面の発煙弾発射機も片側6基に増えている。 ▲ゲパルトオランダ軍仕様 スペック
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