[HEAT/成形炸薬弾頭]
対戦車榴弾(High Explosive Anti Tank)または成形炸薬(Shaped Chage)と呼ばれる、対戦車用弾頭。
炸薬を円錐形状に配置し、モンロー/ノイマン効果によって爆発エネルギーを一点に指向させ、
金属製のライナーを高温・高速のメタルジェット(流体金属)に成形することで装甲を貫通する。
弾頭直径の5~8倍の厚さの装甲板を貫通することが出来るため、様々な対戦車兵器に使用されている。
[RHA/均質圧延装甲]
Rolled Homogeneous Armourの略で、1940年頃から一般的に使用されるようになった装甲用防弾鋼板。
成分的には炭素鋼(スチール)にニッケル、クロム、モリブデン等を加えた合金で、
加熱してロールで2方向に引き延ばし(圧延)することで強度を均質化している。
防弾鋼板として一般的なため、兵器の攻撃力や防御力の指標としても用いられている。
[ERA/爆発反応装甲]
対HEAT弾用の反応装甲の一種で、Explosive Reactive Armourの頭文字を取ってERAとも呼ばれる。
二枚の金属板の間に炸薬をサンドイッチした構造で、被弾すると爆発して外側の金属板を飛ばし、弾頭の貫徹力を阻害する。
RPG-7などのHEAT弾頭に対して高い効果を発揮するが、動作時に周囲の歩兵などを巻き込むと言う欠点がある。
[撃ち放し/Fire and forget]
ミサイル発射後に射手が誘導する必要がない事。そのため射手は即座に退避することが可能。
ミサイル自身が自律的に目標を追尾するタイプの誘導方式の場合この能力を持つ。
[TVC/推力偏向制御]
Thrust Vector Controlの略語で排気ノズル部にベーン(板)などを取り付けて直接噴流の向きを変えて弾体を制御する技術。
発射直後の低速時や高迎え角時でも高い運動性能を確保することが出来る。
[赤外線画像誘導]
赤外線イメージセンサーによって捕らえた画像のコントラスト差から目標を識別し、追尾する誘導方式。
従来の赤外線誘導方式と比べると捕捉距離が長く、フレアなどの妨害の影響もほとんど受けない。
[フォーカル・プレーン・アレイ]
光センサーを同一焦点面上に多数並べて作られるイメージセンサーのこと。
Focal Plane Arrayの頭文字を取ってFPAとも呼ばれる。
デジタルカメラのCCDやCMOSもFPAの一種だが、大抵は赤外線イメージセンサーのことに関して使う。
[AWACS]
Airborne Warning and Control Systemの略で早期警戒管制機のこと。
旅客機などを改造して大型のレーダーを搭載した機体で、空の目となり友軍航空機の管制を行う。
代表的な機体は米国のE-3Cや日本のE-767など。AWACSはエイワックスと読む。
[アクティブレーダー誘導]
シーカー部に小型のレーダーを搭載し、自ら目標を探知、追尾する誘導方式。
[慣性誘導]
慣性航法によって、目標の地点に誘導される誘導方式で、追尾誘導でないため自律誘導とも呼ばれる。
ミサイルに取り付けられたジャイロ・加速度センサーによって自機の位置を測定し、設定された座標に誘導される。
慣性誘導は誤差が大きいため、終末誘導には別の誘導方式が用いられる。
[指令誘導]
慣性誘導の目標座標をデータリンクによって断続的にアップデートすることにより、
移動目標に対しての誘導精度を上げる方式。
[オフボアサイト能力]
Off Boresight、直訳すれば砲口外照準。
正面から離れた目標に照準・攻撃出来る能力のこと。
[FCS]
Fire Control Systemの略で、火器管制装置のこと。
[カナード翼]
主翼前方に装備されている小翼のこと。先尾翼。
[LOAL]
Lock-On After Launch、発射後ロックオンのこと。
ミサイルのシーカーは目標をロックオン出来ないが、発射母機が目標の位置を把握している場合、
慣性誘導などによってミサイルの捕捉範囲内まで誘導してからシーカーにロックオンさせる方式。
対義語にLOBL:Lock-On Before Launch(発射前ロックオン)がある。
[オールアスペクト能力]
目標の全方向からロックオン出来る能力のこと。
以前の赤外線誘導では排気ノズルがある目標後方からしか捕らえることが出来なかったが、
赤外線センサーの冷却などにより感度が上がり、前方からでも熱放射を捕らえることが可能となった。
[INS/慣性航法装置]
Inertial Navigation System(慣性航法装置)の略。
ジャイロセンサーや加速度センサーによって得られた値を1回積分すると速度、2回積分すると移動距離が算出され、
出発地点の位置情報と合わせれば現在位置が分かるという物である。
妨害などを受けることがないが、時間が立つにつれ誤差が生じるため、GPS等と組み合わせて使用されることが多い。
[GPS/全地球測位システム]
Global Positioning Systemの略語。全地球測位システムと訳され、一般にもカーナビ等で有名である。
米国が打ち上げたナブスター衛星30個のうち、上空の数個から信号を受信し三次元測位で位置を算出する。
民間で使用出来るコードでは誤差10m程度だが、軍用の物は誤差16cm程度と非常に精度が高い。
[FLIR]
Forward Looking Infra-Red(前方赤外線画像監視装置)の略。
前方の物体の放射する赤外線を映像化する装置の総称で、
夜間や悪天候時の目標照準、航法などに使用する。フリアと読む。
[BVR]
Beyond Visual Range、目視外距離のこと。
[ラムジェットエンジン]
ラム圧により圧縮された空気を燃料と混合し燃焼させるジェットエンジンの一種。
音速以上の速度域では、空気をただせき止めるだけで大きな圧力が発生する。
これをラム圧といい、これを利用したラムジェットエンジンは通常のジェットエンジンのように
圧縮機やタービンが必要ないため、非常に簡素な構造となる。
構造上低速では動作せず、一般的にマッハ2~5程度の速度が必要となる。
[IFF]
Identification of Friend or Foeの略語で、敵味方識別装置のこと。
特定周波数の信号に反応するかどうかで敵味方を識別する。
[セミアクティブレーダー誘導]
発射母機のレーダーにより目標にレーダー照射し、
その反射波をミサイルが捕らえて追尾する誘導方式。
[ヘッドマウントディスプレイ]
Head Mounted Display(ヘッドマウントディスプレイ)、HMDと略す。
HUDの場合正面の限られた範囲でしか情報を見ることが出来ないが、
HMDはヘルメットのバイザーに直接投影することで、パイロットがどこを向いていても情報を得ることが出来る。
戦闘機用の物はヘルメットの向きをセンサーで感知し、パイロットの向いた方向への照準操作も行える、
JHMCSやHMS等のヘルメット装着式照準装置も開発されている。
[ECM]
Electronic Counter Measuresの略で、電子妨害手段のこと。
電子機器へのジャミングを行う装置。
[MAT]
対戦車ミサイルの陸自式の呼び方。「マット」と読む。
普通は対戦車ミサイルはATM(Anti Tank Missile)だが、
「アトム=原子爆弾を連想してしまうのでは」
という懸念からこう呼ぶようになり、そのまま今に至る。
[ライセンス生産]
製品開発元にライセンス料を支払い、代わりに技術的な支援を受けて全く同じ物の生産を行う形態。
兵器においては予備部品の調達を自国で行えるため、稼働率を維持しやすい他、技術やノウハウを獲得出来ると言うメリットがある。
[ECCM]
Electronic Counter Counter Measuresの略で、対電子妨害手段のこと。
[赤外線誘導]
目標の赤外線放射を捕捉し追尾する誘導方式。主に短距離空対空ミサイルに使用される。
シーカーの構造としては、レティクルと呼ばれるスリットの入った円盤を高速回転させ、
ミサイル中心軸から目標がずれるとシーカーに入る赤外線が点滅するようになっており、
その周期と位相から目標の角度、中心からのズレを検出しミサイルを制御する。
最近の物はガスでシーカーを冷却したり、紫外線領域との2波長化により性能を向上させている。



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AIM-9X Sidewinder

AIM-9

AIM-9Xはサイドワインダーシリーズの最新型であり、従来型より大幅に性能が向上している。ロケットモーターと弾頭部、近接信管はAIM-9Mと同じ物だが、フィンは小型化され前方のカナード翼が固定化、ローレロンも廃止されているため従来の物とはイメージがかなり異なっている。ちなみに操舵装置が後部に移ってしまったため、シーカーやコンピュータがある前部分から後ろに外部からケーブルを通すためのカバーが側面に取り付けられている。

当初サイドワインダーシリーズの後継はイギリス、ドイツと共同開発していたAIM-132 ASRAAMになる予定だったのだが、開発の遅れなどによりドイツは新たにIRIS-Tを開発、アメリカもサイドワインダーを改良する方向に進み、AIM-9Xが開発された。
AIM-9X
▲F/A-18Fに搭載されたAIM-9X

飛翔制御は後部フィンと推力変偏向ベーンによりTVC制御され、これにより発射直後の低速時でも機動性を確保することが可能となった。真横の目標に射撃する試験では発射後僅か24mで自機前方を横切って目標に向かって行ったという。最大旋回加速度は60~80Gにも及ぶと言われており、発射直後に180°方向を変えることも出来る程の機動性を持っている。そのため9G程度の旋回が限界の有人機が機動でこのミサイルを回避するというのは不可能と言っていいだろう。また、シーカーヘッド部はAIM-9L/Mに比べ抵抗が50%低減し、小型化されたフィンやローレロンの撤去により、全体の抗力はAIM-9L/Mより全長が15cm伸びているにもかかわらず15%低減しているという。
AIM-9X
▲ノズル部のTVCベーン

AIM-9X
▲シーカーヘッド部
誘導方式は赤外線画像誘導となり目標を画像として認識出来るようになったためフレアなどにもほとんど影響されない。AIM-9Xにはインジウム(In)とアンチモン(Sb)を利用した解像度128×128ピクセルの赤外線画像シーカー(IRFPA)が搭載されており、多素子化したことにより感度はAIM-9Mのシーカーと比較して400倍に上昇しているという。これにより、補足距離、範囲共に従来の物を凌駕している。ちなみにこのシーカーはレイセオンがASRAAM用に開発していた物を流用して開発された。

また、シーカー部は従来のマグネシウムより耐熱性に優れたサファイアのドームによって覆われている。画像処理や制御用として、レイセオンが開発した1.5MFlopsの処理能力を有するC-80プロセッサーが搭載されている。
AIM-9Xシーカー
▲シーカーユニット

FPAイメージ
▲発射試験でAIM-9Xのシーカーが捕らえたQF-4無人標的機

そしてシーカー視野角向上による90°のオフボアサイト能力の付加により、JHMCS(統合ヘルメット装着照準システム)と組み合わせることで真横の敵をロックし攻撃することが可能になった。さらに慣性誘導装置も付加されたため、発射後ロックオン(LOAL)が可能となり、交戦範囲も大幅に向上している。

その他に地味だが特筆すべき点としてシーカーの冷却システムが挙げられる。AIM-9L/Mではシーカーの冷却にアルゴンガスを用いていたが、AIM-9Xではクライオエンジンと呼ばれるスターリング機関を利用した冷却システム(極低温冷凍機)が搭載され、ランチャー搭載ボトルからのガス供給無しに電力供給のみで冷却を行うことが可能となった。これにより運用時に冷却時間による制約を受けることが無くなった。
AIM-9X
▲F-15Cに搭載されたAIM-9X

運用機種としては兵装インターフェイスにMIL-STD-1553Bデジタルデータバスを持ちAMRAAMを運用出来るF-15C/D/E・F-16C/D・F/A-18C/D/E/F・F-22などでは特に改修せずにLOALなどAIM-9Xの基本性能を完全に発揮することが可能で、MIL-STD-1760デジタルデータバスを持つF-14D・AV-8B・AH-1Wの場合は性能が多少制限される。これらの機体では一番前のハンガー後方のデジタル・アンビリカル・コネクタよって通信が行われるが、近接信管前方にAIM-9Mと同様のアナログ・アンビリカル・ケーブルを持ち、デジタルインターフェイスを持たない旧式の機体でも、AIM-9Mとして認識され使用可能である。

レイセオンでは2008年9月の時点で3000発のAIM-9Xを軍に納入しており、現在発展型のAIM-9Xブロック2の開発及び試験を行っている。AIM-9Xブロック2ではLOALによる射程が延長されており、F-22により超音速で発射した場合、最大射程は従来の2倍の40kmにも達するという。しかし発射後の有効ミッション時間は60秒とされ、最大速度がM2.5程度だと言うことを考えるとなかなか厳しいものだと思われる。

米海軍ではAIM-9XとJHMCSを積極的に導入つつあるが、空軍では機体へのAIM-9XとJHMCSの統合化はあまり優先度が高くないようで、米空軍ではF-22も含め現在もAIM-9Mが主流となっている。

AIM-9X

スペック
製造 レイセオン
全長 3.02m
全幅 0.44m
直径 12.7cm
重量 85.3kg
弾頭重量 9.4kg
誘導方式 画像赤外線+慣性
最大射程 40km
飛翔速度 マッハ2.5
単価 $186,000(2004年度)

Photo
U.S.AirForce
U.S.Navy
Raytheon


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