ASRAAMはイギリスが主導となって開発した次世代短距離空対空ミサイルで、Advanced Short Range Air-to-Air Missile(発達型短距離空対空ミサイル)の頭文字を取ってASRAAMと呼ばれている。 元々はAIM-7スパローの後継をアメリカが、AIM-9サイドワインダーの後継をドイツとイギリスが分担して開発するという計画で、スパローの後継の方は特に問題なく計画が進み、AIM-120 AMRAAMとして米軍で既に採用に至っている。しかしASRAAMの方は、東西ドイツ統合によってソ連製短距離空対空ミサイルのR-73アーチャーが非常に優れた性能を持っていたことが分かり、ドイツとイギリスとの間で意見が分かれることとなる。結局ドイツは独自開発の道を進みIRIS-Tを開発、アメリカもAIM-132 ASRAAMとして採用する予定であったが、これによる開発の遅れなどからサイドワインダーを改良する方向に進み、AIM-9X サイドワインダーを開発している。 ▲タイフーンから発射されるASRAAM ASRAAMはカナード翼を持たないリフティング・ボディ式のミサイルで、飛行制御には後部の全遊動式尾翼のみで行われる。他の次世代短距離AAMのように推力偏向機構などは備えられていないが、最大で50Gの機動が可能とされ、発射後の180度ターンなども可能だという。 他の短距離AAMよりも飛翔速度が重視されており、抗力を出来るだけ低くするため操舵翼の小型化やランチャーに取り付けるためのハンガー以外は突起のない形状となっている。(他の短距離AAMでは操舵翼以外の翼やケーブルを通すためのカバー、推力偏向装置の突起などがある)これにより最大速度はマッハ3.5にも達し、回避不能な範囲が大幅に向上している。 ホーミングユニットとしてはレイセオンが開発した解像度128×128ピクセルの赤外線画像シーカーが搭載されており、AIM-9Xにも採用されているものである。このシーカーユニットはガス冷却によって-200度近くまで冷却され、多素子化したことにより感度が非常に高く(=捕捉距離が長い)、デジタル信号処理ユニットにより高い命中率と対妨害能力を実現している。シーカー首振り角も高く、90度のオフボアサイト能力を持ち、HMDなどと組み合わせれば真横の的にもロックオンが可能。 さらに慣性誘導ユニットにより発射後ロックオン(LOAL)も可能で、ロックオン可能な前方だけでなく後方への攻撃も可能と、交戦範囲も非常に広くなっている。 デジタル/アナログの二系統のインターフェイスを持ち、サイドワインダーやAMRAAMとも完全な互換性を有しているため、それらを発射出来る航空機なら大抵の機体から発射することが出来る。 スペック
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