![]() B1チェンタウロはイタリアのイヴェコ社とOTOメララ社の共同で開発された装輪装甲戦闘車である。装輪車両ながら戦車と同様の105mmライフル砲を搭載した本車は装輪戦車と比喩されることも多い。日本では戦闘偵察車として知られているが、実際には戦車駆逐車として運用されている。 愛称のチェンタウロはギリシャ神話に登場する大弓を操る半人半馬の亜人、いわゆるケンタウロスのことで、装輪の機動性を馬に、戦車砲の火力を大弓に例えて名付けられたものと思われる。本車の事を日本ではセンタウロと呼ぶこともある。 開発 1984年から開発が始まり、1987年には試作1号車が完成し、1989年までに10両の試作車が製造された。1990年に制式採用され、1996年までの間に400両が生産、配備された。現在では320両がイタリア陸軍において運用されている。また、スペイン陸軍に84両が採用され、オマーン陸軍にも120mm砲搭載型が9両採用されている。 基本構造 ![]() エンジン配置は一般的な装甲車と同じフロントエンジン式で、車体後部にはドアが有り砲弾の積み下ろしなどが容易になっている。車体前縁左には油圧ウインチが内蔵されている。エンジンの上部右側に吸気用グリルが有り、車体側面右側のカバーで覆われた排気口により下方に排気される。乗員は操縦手、砲手、装填手、車長の4名である。 ![]() 火力 ![]() 砲身の先端には高効率のマルチポート型の砲口制退器(マズルブレーキ)が搭載されており、これにより砲撃時の反動を40%軽減させるとされる。このマズルブレーキは第二次大戦中にイタリアが開発したセモヴェンテ da 75/18突撃砲に装備された「ペッパーボックス」と呼ばれる多孔式マズルブレーキが元となっているとされる。また、レオパルト1や74式戦車などが装備する一般的なL7 105mmライフル砲の後座長が290mm程度なのに対し、チェンタウロの105mm低反動砲では740mmと倍以上の後座長を有し、反動吸収能力を向上させている。105mm戦車砲の反動を抑えるには通常40t程度が必要とされるが、マズルブレーキとロングリコイル化により25tの車体で105mm砲の射撃を可能とした。 ![]() ▲砲身先端部の砲口制退器(マズルブレーキ) 砲塔の旋回及び主砲俯仰は電子制御の電気油圧式で、砲身俯仰角は-6度〜+16度となっており、非常時には手動で動作させることも可能。砲身にはサーマルジャケットが取り付けられており、熱による砲身の歪みを軽減させる。弾薬は砲塔に14発、車体に26発の計40発を搭載している。 副武装として7.62mmMG3機関銃を主砲同軸及び砲塔上部装填手用キューポラに搭載しており、装填手用のものはレールを介して360度旋回させることが出来る。また、オプションでさらに7.62mm機関銃又は12.7mm重機関銃を車長用ハッチ前方に搭載することが可能。砲塔側面には76mm4連装発煙弾発射機を2基搭載しており、レーザー検知装置と連動して発煙弾を発射させることが可能である。 射撃統制装置&視察装置 ![]() 射撃統制装置にはイタリア軍の第三世代戦車C1アリエテと同じガリレオ・アビオニカ社(現セレックス・ガリレオ社)製のTURMS(Tank Universal Reconfigurable Modular System:戦車汎用火器管制モジュラーシステム)が搭載されている。安定化された視察照準装置及びレーザー測遠機、砲口照合装置、環境センサー、デジタル式弾道コンピュータなどで構成される。防御能力の低い本車において初弾必中は最も重要であり、戦車並みの高度なFCSの搭載は必要不可欠であった。 ![]() ▲砲手用サイト及び発煙弾発射機 ![]() ▲車長用パノラマサイト 操縦手用としてハッチ前方にペリスコープが3基搭載され、中央のものにMESVG/DIL-100ナイトビジョンゴーグルを取り付けることが出来る。 ![]() ▲FCSや視察装置の殆どを共用しているC1アリエテ主力戦車 駆動系 ![]() エンジンはイヴェコ社製の8262 V型6気筒液冷ターボディーゼルを搭載しターボチャージャーとインタークーラーを備え、出力は520hp/2300rpm、最大トルク190kgf・m/1600rpmを発揮する。これにより路上最大速度は時速110kmに達し、停止状態から30秒で70km/hまで加速することが出来る。航続距離は最大で800km、時速70kmで650kmとなっている。燃料は通常は軽油を使うが、ジェット燃料のJP8でも動作する。ちなみにこのエンジンはC1アリエテの12気筒ディーゼルエンジンの気筒数を減少させたもので、ユニットを共通化することでコストダウンを行っている。 トランスミッションはドイツのZF社のZF5HP1500をイヴェコ社がライセンス生産したもので、前進5段、後進2段のオートマチックトランスミッションを搭載する。エンジンとトランスミッションはパワーパックとして一体化されており、約20分で交換が可能である。 タイヤは14.00×20のミシュラン製ランフラットタイヤを左右4個ずつ備え、被弾などでパンクしてもタイヤ内部の中子が車体を支えることにより少なくとも80kmは走行可能とされる。メーカーによれば地雷などでタイヤが2つ完全に吹き飛ばされても走行可能としており、履帯が切れると走行できなくなる装軌車両と比べてタイヤ式の有利な点である言えよう。また、本車では走行中でも操縦席から8輪全ての空気圧を調整することが出来るタイヤ空気圧中央制御システム(CTIS)を有しており、路上では空気圧を高くして摩擦抵抗を下げ、雪上や泥濘地では空気圧を下げて接地圧を下げることで走破性を高めるといったことが可能である。 懸架装置は装輪装甲車としては珍しい全輪独立型の油気圧懸架を採用しており、ストロークは310mmでCTISと共に不整地での機動性向上に貢献している。操舵機構は通常時は第1、2輪が操舵するが、時速20km以下の際は第4輪も操舵することで旋回半径9mと大柄な車体にもかかわらず優れた旋回性を実現している。駆動は6輪または8輪駆動を状況に応じて切り替えることが出来る。浮航能力はないが水深1.2mまでの河川を事前準備無しで渡渉することが可能である。 車内装備等 ![]() 後期生産型の150両は車体後部が22cm延長されており、車体後方の主砲弾用のラックを取り外し、4名分の座席を装着することで完全武装の兵士4名を輸送できる準戦闘兵車仕様とすることが出来る。砲弾ラックと座席は一般的な工具にて簡単に交換することが出来、準戦闘兵車仕様とした場合主砲弾搭載数は16発になる。尚、スペインに輸出された車両は全てこの後期型である。 ![]() ▲後部が延長された後期型 バリエーション チェンタウロ120mm砲搭載型 ![]() 砲塔前面は複合装甲により40mmAPFSDSに耐えることが可能で、側面も14.5mm重機関銃に耐えることが可能。砲塔自体はアルミニウム合金製であり、その上に複合装甲パネルを取り付けることで防御能力を維持しつつ重量増加を抑えることに成功しており、120mm砲を搭載していながら元の鋼製の105mm砲塔より軽量である。 発煙弾発射機はフランスのNexter社製Galix車両防護システムに変更されており、発煙弾だけでなくIRデコイや対人用グレネードなども発射可能である。また、エンジンは650馬力にアップデートしたものが採用された。2011年までにオマーン軍が9両を導入した。 ![]() ▲新設計のHITFACT砲塔 チェンタウロU ![]() VBM フレシア ![]() 砲塔はVCC80ダルド歩兵戦闘車と同じHITFIST砲塔が装備され、エリコンKBA 25mm機関砲またはMk44ブッシュマスターU30mmチェーンガンを搭載する。オプションでTOWまたはスパイクLR対戦車ミサイルランチャーを2基搭載することが可能。エンジンは出力が強化され550馬力のものを搭載しており、最大車重30tまで対応できるようになった。乗員は操縦手、砲手、車長及び兵士8名の計11名である。イタリア陸軍にて採用され、通常型172両、スパイクLR対戦車ミサイル搭載型36両が配備予定で、スペイン陸軍も導入を検討している。全長7.99m、全幅2.99mm、全高2.67m、重量22t。 チェンタウロAPC ![]() チェンタウロACP ![]() チェンタウロMC ![]() チェンタウロARV ![]() スペック
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