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Panzerfaust 3

Panzerfaust 3

パンツァーファウスト3はドイツのダイナマイト・ノーベル社によって開発された携行型対戦車兵器であり、旧ソ連のRPG-7と同様、ロケット推進弾を使用した無反動砲である。

西ドイツでは第二次世界大戦中にドイツが開発したパンツァーファウストを元に、1964年に肩撃ち式とし弾頭もロケット推進弾頭としたパンツァーファウスト44を開発した。その後カールグスタフ無反動砲と共に運用していたが、1970年代に入り旧ソ連で新型戦車のT-72が登場するなど戦車装甲技術の発達に伴い、RHA換算で370mmの装甲貫徹力を持つパンツァーファウスト44や同400mmのカールグスタフは威力不足が懸念されるようになった。
パンツァーファウスト44
▲パンツァーファウスト44
そこで1978年から威力を強化した新しいパンツァーファウストの開発が始められ、1985年にはプロトタイプが完成し、1989年にはパンツァーファウスト3として量産が開始された。ちなみに名称の3はパンツァーファウストの第三世代という意味で、パンツァーファウスト2は存在しない。

パンツァーファウスト3
▲概略図(訓練弾)
構造としては使い捨ての弾薬部と再使用可能な照準器およびグリップ部で構成されており、弾薬部の重量は10.6kg、グリップ部の重量は2.3kgで、総重量は12.9kgとなる。照準器は倍率2.5倍のスコープが取り付けられており、オプションで夜間照準器の搭載も可能。

弾薬部は直径110mmの弾頭と60mmの発射筒から構成される。発射筒は内側がアルミニウムで外側がGFRPで出来ており、発射薬とその後ろに多数のプラスチック球からなるカウンターマスが装填されている。
パンツァーファウスト3
発射時にはカウンターマスが後方に放出されることで反動を相殺する。この方式はデイビス式と呼ばれ、大量の発射ガスを放出するRPG-7のようなクルップ式と比べてバックブラストが少なく、建物内からの発射が可能で、安全性も高いというメリットがある。

発射後の弾頭は初速165m/sで撃ち出され、安定翼を展開、ロケットモーター点火後は約250m/sまで加速する。射程距離はメーカーによれば静止目標で400m、動目標で300mとされるが、これは理想的条件下の話であり、状況によっては短くなる可能性が高い。

弾頭は成型炸薬弾頭によりRHA換算で700mmの貫徹力を有しており、携帯型対戦車ロケットとしては最高クラスである。これは携帯型対戦車兵器としては大口径の110mm 3.9kgという弾頭を使用しているためで、RPG-7のPG-7V弾頭(85mm 2.2kg)やカールグスタフのHEAT551弾頭(84mm 2.4kg)と比べても大きいことがわかる。

しかしながらその代償として、この手の近距離対戦車兵器としては13kgと非常に重くなってしまった。また、仮想敵であるT-72を含む第二世代戦車ならば正面からでも突破することが可能だが、ERAの登場に伴いそれも危うくなったため、後述する改良型が作られている。ちなみにこの弾頭でも現在の第三世代戦車の正面装甲を突破することは難しいと思われる。

パンツァーファウスト3
▲パンツァーファウスト3を構える陸自隊員
パンツァーファウスト3はドイツの他オランダ、オーストリア、スイス、イタリア、韓国で採用されており、日本でもIHIエアロスペースによってライセンス生産が行われ、陸上自衛隊にて110mm個人携帯対戦車弾という名称で採用されている。


バリエーション

パンツァーファウスト3-T
パンツァーファウスト3-T
▲パンツァーファウスト3-T
パンツァーファウスト3-Tは弾頭をタンデムHEAT弾頭としたモデルで、ERA装備車両に対しても有効なダメージを与えることが出来るようになっている。名称のTはタンデムの意。装甲貫徹力はRHA換算で800mmに上昇している。総重量13.4kg、弾頭重量4.1kg。


バンカーファウスト
バンカーファウスト
▲バンカーファウスト
バンカーファウストはその名のとおりバンカーなど陣地目標に対する対物用弾頭を備えたバージョンである。弾頭はHEAT弾頭に加え、その後ろさらにHE弾頭を備えており、先頭の弾頭が成型炸薬によって壁に穴を明けた後、HE弾頭が突入し遅延信管により1200個までの破片と900の鉄球を飛散させる。これにより建物内部など壁越しの目標に被害を与えることが出来る。貫徹能力はRHA110 mm 、コンクリート及びレンガ360mm、土嚢1300mmとなっている。総重量13.3kg、弾頭重量4.1kg。
バンカーファウスト
▲弾頭(中央部がHE弾頭)

パンツァーファウスト3-IT
パンツァーファウスト3-IT600
▲パンツァーファウスト3-IT600
新型のデュアルモードタンデムHEAT弾頭を搭載した最新モデルで、旧ソ連のT-80に対抗するために開発された。名称のIはimproved(発展型)の意味で、装甲貫徹力は対象がERAを装備していてもRHA換算で900mmに達する。この数値は個人携帯型の対戦車兵器としては世界最高レベルの装甲貫徹力と言えるだろう。
パンツァーファウスト3-IT
▲弾頭断面
弾頭の先端部は伸縮式となっており、対戦車戦闘時は伸ばして使用し、対軽装甲車両や建物などを狙う場合は縮ませて使用することで、主弾頭のみの起爆を行うようになる。初速は150m/sで、発射後にロケットモーターにより最大227m/sまで加速する。

また、DYNARANGEと呼ばれるコンピュータ照準器が開発され、内蔵されたレーザー測遠器とレートセンサーなどからコンピュータにより弾着地点を算出し、移動目標に対しても最大600mでの交戦を可能とした。DYNARANGEを組み込んだモデルはパンツァーファウスト3-IT600と呼ばれ、ドイツ及びオランダにて採用された。ちなみにDYNARANGEは通常のパンツァーファウスト3やパンツァーファウスト3-Tにも使用可能で、その場合名称の末尾に600が付く。夜間照準器の搭載も可能で、DYNARANGEに接続用インターフェイスが備えられている。総重量14.3kg、発射装置(グリップ部+DYNARANGE)重量3.8kg、弾薬部重量10.5kg、弾頭重量4.1kg。


Photo
Dynamit Nobel AG
Japan Ministry of Defense
JGSDF 3rd Division

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