パンツァーファウスト3はドイツのダイナマイト・ノーベル社によって開発された携行型対戦車兵器であり、旧ソ連のRPG-7と同様、ロケット推進弾を使用した無反動砲である。 西ドイツでは第二次世界大戦中にドイツが開発したパンツァーファウストを元に、1964年に肩撃ち式とし弾頭もロケット推進弾頭としたパンツァーファウスト44を開発した。その後カールグスタフ無反動砲と共に運用していたが、1970年代に入り旧ソ連で新型戦車のT-72が登場するなど戦車装甲技術の発達に伴い、RHA換算で370mmの装甲貫徹力を持つパンツァーファウスト44や同400mmのカールグスタフは威力不足が懸念されるようになった。 ▲パンツァーファウスト44 ▲概略図(訓練弾) 弾薬部は直径110mmの弾頭と60mmの発射筒から構成される。発射筒は内側がアルミニウムで外側がGFRPで出来ており、発射薬とその後ろに多数のプラスチック球からなるカウンターマスが装填されている。 発射時にはカウンターマスが後方に放出されることで反動を相殺する。この方式はデイビス式と呼ばれ、大量の発射ガスを放出するRPG-7のようなクルップ式と比べてバックブラストが少なく、建物内からの発射が可能で、安全性も高いというメリットがある。 発射後の弾頭は初速165m/sで撃ち出され、安定翼を展開、ロケットモーター点火後は約250m/sまで加速する。射程距離はメーカーによれば静止目標で400m、動目標で300mとされるが、これは理想的条件下の話であり、状況によっては短くなる可能性が高い。 弾頭は成型炸薬弾頭によりRHA換算で700mmの貫徹力を有しており、携帯型対戦車ロケットとしては最高クラスである。これは携帯型対戦車兵器としては大口径の110mm 3.9kgという弾頭を使用しているためで、RPG-7のPG-7V弾頭(85mm 2.2kg)やカールグスタフのHEAT551弾頭(84mm 2.4kg)と比べても大きいことがわかる。 しかしながらその代償として、この手の近距離対戦車兵器としては13kgと非常に重くなってしまった。また、仮想敵であるT-72を含む第二世代戦車ならば正面からでも突破することが可能だが、ERAの登場に伴いそれも危うくなったため、後述する改良型が作られている。ちなみにこの弾頭でも現在の第三世代戦車の正面装甲を突破することは難しいと思われる。 ▲パンツァーファウスト3を構える陸自隊員 バリエーション パンツァーファウスト3-T ▲パンツァーファウスト3-T バンカーファウスト ▲バンカーファウスト ▲弾頭(中央部がHE弾頭) パンツァーファウスト3-IT ▲パンツァーファウスト3-IT600 ▲弾頭断面 また、DYNARANGEと呼ばれるコンピュータ照準器が開発され、内蔵されたレーザー測遠器とレートセンサーなどからコンピュータにより弾着地点を算出し、移動目標に対しても最大600mでの交戦を可能とした。DYNARANGEを組み込んだモデルはパンツァーファウスト3-IT600と呼ばれ、ドイツ及びオランダにて採用された。ちなみにDYNARANGEは通常のパンツァーファウスト3やパンツァーファウスト3-Tにも使用可能で、その場合名称の末尾に600が付く。夜間照準器の搭載も可能で、DYNARANGEに接続用インターフェイスが備えられている。総重量14.3kg、発射装置(グリップ部+DYNARANGE)重量3.8kg、弾薬部重量10.5kg、弾頭重量4.1kg。 |