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AH-1 Huey Cobra

AH-1

AH-1ヒューイコブラはベトナム戦争においてヘリボーン作戦(ヘリによる兵士の敵地周辺への移送)を支援するために開発された世界初の本格的武装ヘリコプターである。

ベトナム戦争当時はヘリボーン直前の周囲の敵部隊を掃討するため、輸送ヘリコプターUH-1に擲弾筒などを搭載して航空火力支援を行っていたのだが、やはり本格的武装ヘリコプターが必要なのは明らかであった。そこで米陸軍はAAFSS(新型航空火力支援システム)構想を打ち出し、各メーカーに航空火力支援ヘリコプターの要求提案を出した。そして選定の結果ロッキード社の案を採用、AH-56シャイアンとして装備することが決まったのである。
AH-56シャイアン
▲AH-56シャイアン
推進式プロペラや無間接ローターヘッドなどを採用し、当時としては革新的なヘリコプターだったが、それ故に開発はうまくいかなかった。


しかし緊急を要するベトナム戦争には間に合わず、それまでの繋ぎとして既存のヘリコプターを改修し武装ヘリコプターを装備することを決めた。

そして開発されたのがベルのUH-1Cをベースとして開発されたAH-1Gヒューイコブラである。1965年9月7日に初飛行し翌々年1967年9月にはベトナム戦争で早くも実戦投入された。

AH-1Gはベトナム戦争で期待通りの成果を上げたが、一方AH-56シャイアンの方は開発が難航し、構想の大幅な見直しによりキャンセルされた。そのため繋ぎとして開発されたAH-1は主力武装ヘリコプターとなり世界各国に輸出されるベストセラー機となった。

AH-1はUH-1をベースとしているにもかかわらず面影はほとんど無く、正面投影面積を小さくするために横幅は約1m、タンデム副座のコックピットとし、兵装をスタブウイングに搭載し機首に機関砲を搭載するという武装ヘリコプターのスタンダードを築き上げた。
AH-1S
▲極限まで正面投影面積を小さくした設計となっている

UH-1
▲ベースとなったUH-1
メインローターやエンジン、トランスミッション、テールローターなど駆動系はUH-1と基本的に共通だが、ジャイロを利用した安定操縦性増大装置(SSAS)の装備や油圧系統が3系統のバックアップになっている点などの改良が施されている。速度はUH-1より向上しているが、ローターヘッドがシーソー式なため操縦応答性は低く、マイナスGの機動制限があるため、あまり機動性は高くない。

M197

現在主流となっているAH-1には固定兵装として機首のユニバーサルターレットにM197 3砲身20mmガトリング砲が搭載されている。この20mmガトリング砲はM61バルカン砲をヘリ用に改造した物で、最大毎分3000発の発射能力を持ち(通常は毎分730発で運用)、ガナーのヘルメットに連動してターレットが可動する。TSUに追従させるモードやパイロットのヘルメットに連動させるモードもある。ちなみにこのユニバーサルターレットにはM197以外にもM230チェーンガンや7.62mmミニガン、40mmグレネードランチャーなども搭載可能である。
M197
▲M197ガトリング砲

スタブウイングに搭載される兵装は主にBGM-71 TOW対戦車ミサイル8発と2.75インチロケット弾ポットである。TOWは機首に装備されたテレスコピック照準ユニット(TSU)によって捕捉する。
ベトナム戦争後に新たな脅威として認識されるようになったのがワルシャワ条約機構軍の機甲部隊であり、それに対抗する戦力の一つとしてAH-1へのTOWの装備が進められた。
TOWは有線式半自動誘導の対戦車ミサイルで、最大で3750mの射程距離を持ち、大抵の戦車を破壊出来る攻撃力を持っている。
AH-1
▲TOWを発射する陸自のAH-1S

一部のAH-1には機上レーザー追跡装置(ALT)装備し目標の捕捉時間が短くなっている。また、TOW照準機にC-Nite FLIRを搭載し夜間戦闘能力が向上している。C-Nite改修は自衛隊のAH-1Sにも73号機以降の機体に施されており、それ以外でも改修されている機体がある。
AH-1
▲左がC-Nite FLIR搭載型、右が従来型TSU

バリエーション
AH-1G:初期生産型。機首ターレットに7.62mmミニガンを搭載、後に40mmグレネードランチャーも追加された。エンジンはT53-L-13ターボシャフトエンジン(1400馬力)を搭載。
AH-1
▲初期量産型のAH-1G

AH-1Q:M65 TOW対戦車ミサイルシステムを搭載し対戦車攻撃が可能となったもの。ヘルメット照準システムも搭載された。

AH-1S:当初Mod AH-1Sと呼ばれた。TOWを搭載したことで機動性が下がったため、エンジンを強化型のT53-L-703(1800馬力)に変更したもの。

AH-1P:AH-1Sの改修ステップ1型で、当初量産型(プロダクト)AH-1Sと呼ばれた。キャノピーを涙滴型から平面ガラスに変更し太陽光の反射を押さえることで、発見されにくくなった他、計器板の配置変更、航法装置の強化を行い、匍匐飛行(NOE)が可能となった。

AH-1E:AH-1Sの改修ステップ2型で、当初武装強化型(アップガン)AH-1Sと呼ばれた。機首にユニバーサルターレットを搭載し、M197 3砲身ガトリング砲を搭載、兵装管理システムの改善などを行った。陸上自衛隊も試験用に2機購入しており、1機は陸自広報センターに飾られている。
AH-1E
▲AH-1E

AH-1F:AH-1Sの改修ステップ3型で、近代化型(モダナイズド)AH-1Sと呼ばれた。陸軍型AH-1の最終型でもある。新型FCS、レーザー測遠器、AN/ASN-128ドップラー航法装置IFF応答装置、AN/ALQ-144赤外線ジャマー、赤外線抑制装置、新型給油システム、新型通信装置、HUDの搭載など様々な近代化改修が行われている。後にC-Niteと呼ばれる改修によりFLIRが搭載され夜間戦闘も可能となった。
AH-1F
▲自衛隊も装備するAH-1F

ちなみに自衛隊のAH-1Sについては導入当時の略称をそのまま使っているためややこしいが、富士重工でライセンス生産されていた物はAH-1F規格であり、研究用に購入した2機のAH-1Eを除いて全てがAH-1Fである。

米陸軍ではAH-1の後継機体としてAH-64を採用したため2001年までにAH-1は米陸軍から全機退役している。

その他海兵隊向けとしてはAH-1Gに機首ターレットと20mmガトリング砲を搭載、エンジンを双発化したAH-1Jシーコブラ、TOWを運用出来るようになったAH-1T改良型シーコブラ、エンジン出力を大幅向上させたAH-1Wスーパーコブラ、最新型のAH-1Zヴァイパー等があるが、これらは陸軍系統の機体とはかなり異なるため別項で紹介する。


スペック(AH-1F)
製造 ベル
全長 16.18m
全幅 3.28m
胴体幅 0.98m
全高 4.19m
ローター直径 13.41m
自重 2993kg
最大離陸自重 4536kg
エンジン ライカミングT53-L-703ターボシャフトエンジン(1800馬力)×1
最大速度 277km/h
実用上昇限界 3710m
武装 M197 3砲身20mmガトリング砲×1(750発)
BGM-71 TOW対戦車ミサイル(8発)
M261ハイドラ70ロケット弾ポッド(19発×2)
採用国 アメリカ
日本
バーレーン
イスラエル
パキスタン
トルコ
ヨルダン
タイ
韓国


Photo
U.S.Department Of Defence
U.S.Army
JGSDF

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