AV-8ハリアーはイギリスが開発したVTOL(垂直離着陸)機で、VTOLとしては唯一の実用機である。そのため現在までに様々な改修型が開発され、世界各国で運用されている。 VTOL機は世界各国で試作されていたが、構造が複雑で重量も増加しがちになり、どうしても通常より劣る性能になってしまっていた。 何故このハリアーだけが成功したのかというと、他国のVTOL機は通常のエンジンと垂直離着陸用のエンジンという2つのエンジンを搭載していたため重量過多になってしまっていた。しかしハリアーは1つのエンジンに四つの推力変更ノズルを持ち、離着陸時のみにノズルを可動させるという方式を取ったため重量も軽くなり、同時にノズルを斜めにすることでSTOL(短距離離陸)能力を得ることにも成功したのである。ノズルは0(水平)〜98.5度の範囲で可動しやや前方にも向くため後退することも可能。 ハリアーは特徴的な下半角付きの主翼を持っているがこれはVTOL機やヘリなどで発生するダウンウォシュ(吹き下ろし)の影響を小さくするためで、主翼の面積が小さいのもこのためだと思われる。 量産型ハリアーGR.1は1966年に初飛行し、1968年からイギリス海軍、空軍で部隊配備が開始された。1969年にはアメリカ海兵隊がAV-8A/Cとして装備する事をを決めた。しかし当時のハリアーは兵装搭載量や航続距離がかなり貧弱で、航続距離を伸ばすために必要最低限の武装しかすることが出来なかった。アメリカ海兵隊だけでなくイギリス空軍でも共通の不満であり、早くからハリアーの発展型が検討されていた。 1973年には米国マクドネルダグラス社と英国BAEシステムズ共同によりAV-8+として機体案を発表し、1975年には米政府が開発予算を承認した。機体名称もAV-8Bに変更され、AV-8Aを改造して作られた試作型のYAV-8Bは1978年に初飛行した。 AV-8Bでは、エンジンを強化型のペガサスエンジン2を搭載し、主翼部に複合素材を使用して軽量化、揚力増強装置(LIDS)の搭載、視界の向上、HUDの搭載、CRT表示装置の装備、INSプラットフォームの導入、ポジティブサーキュレーションによるSTOL能力の向上等によりAV-8Aとは見た目は同じでもほとんど別の機体といえるほどの強化が成された。 ハリアーはVTOL機だが運用上着陸時のみ垂直に着陸する。これは何故かというと、燃料満載で武装を積むと重量が重くなり垂直離陸をするにはかなり出力を上げないといけないため、周囲への危険性が高くなり燃料消費も大きい。そのためAV-8Bの場合垂直離陸時の兵装搭載量は3000kg程度に制限されている。 一方STOLで離陸すれば翼の揚力により非常に効率が良くなるため、兵装搭載量は7700kg程度まで上がる。 そのため通常はSTOLで離陸、着陸時は燃料や兵装分軽くなるためVTOLというSTOVLでの運用が基本である。 フォークランド紛争でイギリスの数少ない航空兵力として活躍し、26機のアルゼンチン空軍機を撃墜。事故により6機が失われたが、空戦での被撃墜は0機だった。 ハリアーにはFLIR(赤外線画像監視装置)を搭載し夜間戦闘能力を上げたAV-8Bナイトアタック型やAN/APG-65レーダーを搭載しAMRAAMの運用が可能なAV-8Bハリアープラスなど様々な改修型が存在する。初期型にはレーダーが無く、それを改修したタイのAV-8Sにもレーダーは搭載されていない。 現在後継機種としてマルチロールステルス機F-35がアメリカを中心に世界各国で共同開発されている。 スペック(AV-8Bハリアープラス)
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