ストライカーはスイスのモワグ社が開発した装輪装甲車ピラーニャ3をベースに開発された8輪のタイヤを持つ装輪装甲車で、米国のストライカー旅団の中核をなす車両である。 ストライカー旅団は世界各国の様々な紛争地域に対して96時間以内に展開できる緊急即応部隊として設立され、軽量、高機動な空輸可能な車両が必要となり、ストライカーが開発された。 最も基本的な形態のストライカーICVは乗員2名でその他に歩兵小隊9名を輸送可能。C-130、C-5、C-17輸送機により輸送可能であり、C-130なら1両、C-17なら4両、C-5は7両のストライカーを輸送可能で、あらゆる地域に迅速に展開することが出来る。 ストライカーはフルタイム4WD、状況に応じて8WDに切り替えることが出来、舗装路で100km/h、未舗装路でも60km/hでの走行が可能。また、タイヤ空気圧中央制御システムにより路上では空気圧を高くして摩擦抵抗を下げ、泥濘地では空気圧を下げて接地圧を下げることであらゆる地形で高い走破性能を有している。 足回りには装輪装甲車としては珍しく全輪油気圧懸架を採用しており、これも走破性を高めるのに貢献している。将来的にはセミアクティブダンパーを用いた懸架装置の搭載も考えられており、搭載されれば悪路走破性能が飛躍的に向上するだろう。 ▲C-130から降車するストライカーICV 軽装甲車両だが高硬度鋼板の上にドイツのIBD/Deisenroth Engineering社製の軽量セラミックス複合装甲パネルがボルト止めされているため、ある程度の防御力は持っている。14.5mmマシンガン程度なら完全に防ぐことが可能で、榴弾砲や迫撃砲弾の至近炸裂よる破片も防ぐ。内側にはケブラー繊維による内張が施されており、被弾時に装甲の内部剥離によるダメージから乗員を保護する。 オプションとして対RPG用にERA(爆発反応装甲)も存在するが、装備すると重量の大幅増加によりC-130による輸送が出来なくなる。そのためか2004年のイラク戦争時にはRPG対策に車体を取り囲む「檻」のような形状のスラット・アーマーが装備されていた。一見脆弱に見えるが、あるストライカーはイラクにてRPG-7を9発食らったにもかかわらず、スラット・アーマーにより乗員は無事だったという話もある。 ▲スラット・アーマーを装備している ICVの上部には遠隔操作武器用のハードポイントが設置されており、12.7mm重機関銃M2、40mm擲弾発射機MK19、いずれかを搭載することが可能でその他に補助武器として7.62mm機関銃M240を搭載することが可能。これらの武装は赤外線画像監視装置により車内のモニターを見ながら操作が可能。今後解像度が640×480の物を搭載することが決まっている。その他ドライバー用に3つのペリスコープ、車長用に7つのペリスコープと赤外線カメラを搭載している。また、M6発煙弾発射機を標準で4基搭載している。 ストライカーには戦術データリンクシステムFBCB2を搭載しており、車両や司令室との情報の共有が可能となっている。レイセオンAN/TSQ-158 EPLRSとIVCS(車輌間情報システム)、GPSシステム、衛星通信装置等を搭載し車内モニターのマップには全味方車両が表示され、無人偵察機や司令部とのデータリンクにより敵部隊情報を各車両で共有する事が可能。 ▲レイセオン社製EPLRS。敵味方部隊情報が統合表示される。 バリエーション ストライカーには最初に陸軍に採用され主力となっている兵員輸送型(ICV)の他に、多数のバリエーションが存在する。105mm無人砲塔搭載型のMGS、対戦車ミサイル搭載型のATGM、迫撃砲搭載型(MC)、火力支援型(FSV)、偵察型(RV)、指揮通信型(CV)、工兵分隊用(ESV)、医務後送車(MEV)、NBC偵察型(NBC RV)等があり、現在配備が進んでいる。 ▲ストライカーMGS 105mm戦車砲搭載型の機動砲システムMGS(Mobile Gun System)はストライカー旅団においての正面火力を担う車両で、歩兵部隊の火力支援などを主として行う。最終的に204両が生産される予定。 MGSには主武装としてゼネラルダイナミクス社製M68A1E4 105mm低反動キャノンを搭載しており、副武装として12.7mm重機関銃M2、主砲同軸に7.62mm機銃M240を搭載している。M1エイブラムズと同等のFCSを搭載し、行進間での目標捕捉、射撃も可能である。105mm砲はカーティスライト社製自動装填装置が搭載され、1分間に10発程度の射撃速度を持つ。 弾頭はNATOの105mm用砲弾が使用可能で、少なくとも第二世代戦車と同等の攻撃力を持っているが、ストライカーでは対物用のHEP弾、対人用のキャニスター弾、対戦車用のHEAT弾、対装甲車両用のAPFSDS弾(装弾筒付翼安定徹甲弾)という四種類の弾頭を使い分けることによって様々な作戦に投入できるようになっている。 ▲ストライカーATGM ストライカーATGM(Anti-Tank Guided Missile)は車体上部に二連装TOW対戦車ミサイル発射機を搭載したタイプで、MGSでは対応できない戦車などの重装甲車両を破壊するために使用される。ATGMに搭載されるTOWはTOW2Bと呼ばれる最新型で、対ERA用のタンデム(二重)弾頭にトップアタック能力まで持っており、現代のほとんどの戦車を破壊出来る。この画像では箱形のリアクティブアーマー(ERA)も装備されている。 ▲ストライカーESV ストライカーESV(Engineer Support Vehicle)は工兵分隊用の車両で、主に地雷原の掃討や障害物除去などを行う。車体前部にマインプラウまたはマインローラーを装備可能で、牽引しているトレーラーには地雷原除去用の爆導索や地雷散布装置などが搭載されている。 ▲ストライカーRV ストライカーRV(Reconnaissance Vehicle)は偵察型の車両で、上部に第2世代FLIR、GPS、レーザー測距器、ビデオカメラからなるLRAS3長距離先進観測システムを搭載している。 ▲ストライカーMC ストライカーMC(Mortar Carrier)は車体後部に120mm重迫撃砲M121を搭載したタイプで、従来の牽引型に比べ迅速な展開が可能となっている。射程7.2kmで榴弾、照明弾、赤外線照明弾、煙幕弾、DPICM(クラスター砲弾)などが発射可能である。60mm迫撃砲や81mm迫撃砲を追加装備した車両も存在する。 ▲ストライカーMEV ストライカーMEV(Medical Evacuation Vehicle)は医務後送用車両で、応急医療機材と自動担架昇降装置、電源装置などを搭載する。3人の医療スタッフと4人分の担架もしくは6人の負傷者を乗せることが可能。 ▲ストライカーFSV ストライカーFSV(Fire Support Vehicle)は火力支援車で、着弾観測、目標捕捉、目標識別、攻撃指示などを行い砲兵部隊を支援する。 車体上部にレーザー測距器、レーザー照射誘導装置、FLIR、光学センサーからなるAN/TVQ-2 G/VLLD目標捕捉・指示装置が搭載されている。 ▲ストライカーNBCRV ストライカーNBCRV(Nuclear/Biological/Chemical Reconnaissance Vehicle)はNBC偵察型で、核兵器・生物兵器・化学兵器等で汚染された地区の調査を行う車両である。遠隔式化学物質検知システム、放射線測定器、化学物質検知器、質量分析装置、環境センサー、サンプル採取機などの探査システムを備える。 スペック(ストライカーICV)
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