ルクレールはAMX-30の後継として1992年から配備されたフランス陸軍の最新鋭主力戦車である。第3世代戦車としては一番新しく、高い火力と機動力を持ち先進の電子機器を装備しているため、第3.5世代戦車と呼ばれている。 ルクレールはAMX-30の生産開始2年後の1964年から開発が始まり、1973年から西ドイツと共同開発が着手されたが、1982年に中止された。1983年から独力で開発を再開、1986年には試作車両が完成し1991年に量産1号機がロールアウトした。 車両電子機器 ルクレールの最大の特徴が「ファインダース」と呼ばれる車両間データリンクシステムである。これは戦場のあらゆる最新情報を、戦車/砲兵/歩兵/指揮所間で相互にリアルタイムで情報交換し続け、車長はその情報を基に戦場の状況を把握し次の戦闘行動を決めることが出来るのである。データリンクによって得た情報は車内のカラーディスプレイのデジタルマップに表示され、まるでコンピュータゲームのように味方の位置や状況をリアルタイムで知ることが出来るのである。 この手のC4IシステムはM1A2等にも搭載され始めているが、初めからこのような高度なデータリンクシステムを搭載した戦車はルクレールが始めてである。合計30セットあるマイクロコンピュータはデジタルデータバスによってリンクしており、戦車長、砲手、操縦手が同時にデータリンクによって得られた情報や車両の情報を見ることが出来る。 火砲 主砲はGIAT社独自開発の52口径120mm滑腔砲CN120-F1を搭載している。この砲は第三世代戦車では一般的なラインメタル製の44口径120mm滑腔砲と比べると砲身が長く、砲弾の初速が速いため威力が高い。GIATが開発した新型APFSDS弾を使用した場合、砲弾の初速が1790m/sと世界最高レベルで44口径に比べ射程も1000m長いという。さらにルクレールでは第三世代戦車としては90式に次いで自動装填装置を採用している。自動装填装置は90式と同じくベルトマガジン式で1分間に12発発射できるという。砲弾はAPFSDS弾、多目的HEAT弾、榴弾が装備されており、スイッチ一つで切り替えることが出来る。 砲手用照準機はSAGEM HL60照準器が搭載されており、3.3倍と10倍の切り替え式の昼間用照準サイト、倍率10倍のCCDカメラ、熱線暗視装置、レーザー測遠器が装備されている。照準器は2軸安定化されており、主砲とも機械的にリンクしているため、照準動作に砲身が追従するようになっている。射撃統制装置は各種センサーと照準器がコンピュータ制御され、初弾命中率は95%だという。行進間射撃も可能。 複砲として主砲同軸に12.7mm重機関銃、砲塔上部に7.62mm機銃を装備している。 駆動系 エンジンはUDV8X 1500T9水冷V型8気筒ディーゼルエンジンを搭載している。このエンジンの特筆すべき点はハイパーバー(イペルバール)過給システムというディーゼルエンジンにガスタービンを組み合わせたようなシステムを装備している点で、両者の優れた特性を持っている。 通常のディーゼルエンジンのターボチャージャーではエンジンの排気圧でタービンを回し、コンプレッサーを動作させることでエンジンの吸気量を増やして出力を増大させる。一方、ハイパーバー過給システムでは排気に燃料を吹き付けてその燃焼ガス圧でタービンを回すため、通常のターボチャージャーより高い出力を得ているのである。 さらにこの過給システムは単体でガスタービンとして動作させることが可能で、出力9kwのAPU(補助動力装置)となり、待機時の電力確保やコールドスタートが容易になるというメリットも生まれた。 ▲パワーパック このシステムのおかげで排気量が16480ccしかない割に1500馬力のパワーを得ており、レオパルド2のエンジンは47600cc、90式でさえ21500ccということを考えると相当コンパクトに仕上がっている。このためパワーウェイトレシオは第三世代戦車では90式に次ぐ27hp/tと良好な数値で、5秒で停止時から時速32kmまで加速でき、最高速度も時速72km(実際には80km以上出るらしい)と非常に優れた機動性を持っている。エンジンとトランスミッションが一体化されたパワーパックは30分で交換出来るという。 優れたエンジンだが欠点として、レオパルド2などのディーゼルエンジンに比べ燃費が悪いのと、システムが複雑なため前線での整備や修理が困難で、故障時にはパワーパックごと換装するか、整備施設の整った後方へ後退する必要がある。このためアラブ首長国連邦へ輸出された際にはドイツ製の通常のディーゼルエンジンに換装されている。 トランスミッションは前進5段、後進2段のSESM ESM 500自動変速機を備えており、ハイドロスタティック式操向機によりスムーズな旋回が可能となっている。懸架装置は独立型の油気圧式サスペンションを備えているが、90式や74式のように姿勢制御は行うことが出来ない。 防御装備 装甲は交換が容易なモジュラー式の複合装甲を装備しており、被弾時には破損した部分だけを交換することで防御力を回復させることが出来る。他にも新型装甲が開発された場合に装甲を交換することで防御力を上げられるというメリットもある。 防御システムとしてKBCM戦闘車両防護システムが搭載されている。これはGalixと呼ばれる80mm擲弾発射システムとレーザー警戒装置、ミサイル警戒装置、赤外線ジャマーからなるシステムである。9連装の80mm擲弾発射機は砲塔両側面に取り付けられており、発煙弾、赤外線フレア、対人グレネード弾を装填可能で、KBCMはそれぞれの防護装置がコンピュータによって制御され連動して車両を防護するという優れた防護システムである。 ▲シュノーケルを装備すると最大水深4mまでの渡河能力を得るという 近年多くなってきた都市戦闘に対応するために米国でM1のTUSKが開発されたように、フランスでもルクレールAZURと呼ばれる車両が開発されている。AZURはAction en Zone URbaine(都市圏行動)の略で、フランス語で深い青という意味に掛けた略語である。 AZURでは車体側面前方に増加複合装甲を装備、後方にはスラットアーマーを装備することで全方位からのRPG対戦車ロケット弾による攻撃に耐えられるようになっている。火炎瓶対策として砲塔やエンジン部上部にも薄い装甲が付加されている。さらに都市作戦用の新型榴弾も使用可能となっているという。砲塔上部の機関銃は遠隔操作型に変更されている。 スペック
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