M2ブラッドレーはアメリカ軍の装軌式歩兵戦闘車で、3名の乗員の他、フル武装の兵士6人を輸送することが可能で、歩兵部隊の主力車両として現在も各地で活躍している。M113装甲兵員輸送車の後継として1976年から本格的に開発が開始され、1981年から配備開始、現在までに6,724台が生産された。 それと同時に同じ車体を利用した偵察/戦闘型のM3ブラッドレー騎兵戦闘車も作られており、こちらは兵士6人の代わりに偵察要員2名と追加の弾薬を搭載している。 ベトナム戦争の教訓から戦場での安全な歩兵部隊の輸送、火力支援が出来る車両が求められ、同時開発されていた戦車であるM1エイブラムズに追従出来る機動性と装甲車両を撃破出来る攻撃力を兼ね備えている。 主武装としてM242 25mmチェーンガンを装備し、主砲同軸に7.62mm機関銃M240を搭載、砲塔左側面にはTOW対戦車ミサイルを搭載している。 M242チェーンガンは毎分200発の射撃能力を持ちスイッチ一つで対装甲用のAPDS弾(徹甲弾)と対人、対物用のHEI弾(焼夷榴弾)を切り替えることが出来る。通常のガス圧駆動式機関砲と比べ、電動チェーンによって強制的に排夾、装填を行うため、弾詰まりや動作不良がかなり低減されている。 ▲M242 25mmチェーンガン 対重装甲車両用に搭載されているTOW対戦車ミサイルは、有線式の半自動誘導ミサイルで最大で3750mの射程を持っている。M2A1/M3A1から搭載されたTOW2ではタンデム二重弾頭によりリアクティブアーマー(ERA)にも対応出来るようになり、さらにトップアタック能力の付加により戦車の弱点である上部を狙うことが可能となったため、ほとんどの戦車を破壊可能である。 ▲TOWを発射するM2A2 M2の車体後部側面には兵士が乗車戦闘を行う為のガンポート(銃眼)が設けられていたのだが、命中精度は期待できず射界も狭いため、結局役に立たないことが分かり、後に装甲強化のために塞がれてしまった。 車体はアルミ合金製で主に中空装甲になっており、徹甲弾に対しては一番厚い前面装甲でも14.5mm弾程度までの防御性能と、当初から防御力の低さが指摘されていたのだが、後に改良されM2A2/M3A2、M2A3/M3A3と進む毎に防御力は強化されている。 M2A2では兵員室側面のガンポートが塞がれ、車体全周に25mm厚の装甲板が追加されており、リアクティブアーマー(ERA)も装備出来るようになっている。これにより30mm徹甲弾までに対応出来る防御力を得ている。現在では前線の車両にはほぼERAが装備されており、RPG-7などのロケット弾にも対応出来るようになっている。M2A3/M3A3では砲塔上面にも装甲が追加された。 M2A3/M3A3では近年のデジタル化の波に乗り、M1A2SEPで搭載された様々なハイテク機器を搭載している。第二世代のFLIRとレーザー測距器が連動した新型FCSにより、動いている目標でもロックオン、ターレットが目標を自動追尾し、25mmチェーンガンやTOWによって正確な攻撃が可能になる。 ▲射撃訓練を行う米陸軍第四歩兵師団第一大隊 さらに戦場のインターネットと言われるFBCB2戦術データリンクシステムが搭載され、GPS/INU/VMS(衛星測位/慣性航法/車両センサー)による航法システム、EPLRS(能力向上型方向・位置報告システム)、IVIS(車両間情報システム)等とリンクして、車内のカラーディスプレイにはデジタルマップ上にリアルタイムで敵味方部隊情報が表示される。 これにより同じシステムを搭載するM1エイブラムズ、AH-64D攻撃ヘリやストライカー装甲車などとのデータリンクにより戦場での連携を容易にし、司令部、無人偵察機などともリンクし各種情報をリアルタイムで共有する。 ▲FBCB2戦術データリンクシステム 動力には出力600馬力のカミンズ製 VTA-903ターボチャージャー付きディーゼルエンジンを搭載している。当初は500馬力だったのだが、M2A2/M3A2で装甲強化した際に大幅に重量が増加したため、機動性低下を避けるために出力が強化された。それでも機動性は低下しており、M2A3/M3A3でさらに重量が増加したため初期の頃に比べると最高速は10km/h近く低下している。ウォーターバリアーを展開する必要があるが、時速6.5kmでの水上浮行も可能。 トランスミッションにはゼネラル・ダイナミクス製HMPT-500油圧機械式無段変速変向装置が搭載されており、伝達効率の向上が図られている。 M6 Linebacker M2A3ベースの最新型では、ジャイロスコープによって2軸安定化されたターレットと、第二世代FLIR、レーザー測距器などに連動したデジタル制御FCSにより、最高速度で走行しながらでも高速で飛行する航空機も捕捉し続けることが可能で、巡航ミサイルさえも撃墜出来るとされる。 レーダーなどは搭載されていないが、前線地域防空ネットワークに接続されており、他のレーダーシステムなどから自動的に目標情報を受信し交戦することが可能である。 スペック(M2A3 Bradley)
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