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90式戦車

90式戦車

90式戦車は74式戦車の後継として開発された陸上自衛隊の第三世代戦車である。読み方は「きゅうまるしき」と読む。120mm滑腔砲による高い攻撃力、複合装甲による高い防御力、1500馬力のエンジンによる優れた機動性という第三世代戦車の基本的な部分を抑えつつ、西側第三世代戦車としては初めて自動装填装置や自動追尾機能を有するFCSを搭載し、74式戦車で採用された姿勢制御機能を有する懸架装置等の独自技術も盛り込まれ、国産戦車としては初めて世界的にも一歩先を行く戦車となった。


開発&配備
戦車教導隊の90式戦車

74式戦車が配備され始めた1975年頃、ソ連では125mm滑腔砲や複合装甲、自動装填装置などを搭載したT-64や新型戦車のT-72も配備が始まりつつあった。西側でも1977年に第三世代戦車のレオパルト2が登場し、74式戦車は数年で旧式化するという状況に陥っていた。そのため74式戦車が配備されて間もない1976年には新戦車の研究開発が始まったのである。

1977年にはコンポーネントの部分試作が始まり、1980年には新戦車の開発要求書がまとまり、1982年から一次試作が始まった。一次試作では2両の試作車が製造され、1983年から1986年まで試験を行なっている。1986年からは二次試作が始まり、4両の試作車が製造され、各種試験を行った。4両で合計20500kmに及ぶ走行試験と3100発の主砲実弾射撃試験や各種環境での様々な試験を行った。1989年には陸上自衛隊による実用試験が行われ、その後1990年8月に90式戦車として正式採用され量産を開始、翌91年9月から配備が開始された。

対ソ連の北方重視の配備計画により、北海道に優先的に配備されたため、それ以外では富士の戦車教導隊と教育用として少数が土浦の武器学校及び駒門の第1機甲教育隊に存在するのみである。当初11億円程度であった調達価格は量産と共に低下し、平成11年度には9億円を切り、平成13年度以降はほぼ8億円前後で推移した。2010年の生産終了までに341両が生産されている。本州の74式戦車の入れ替わりにはならなかったため、そちらの後継として小型軽量な10式戦車が開発され、配備が進められている。

なお、90式戦車の配備は北海道が中心であるが、2011年10月には訓練のため、民間の高速フェリー「ナッチャンWorld」にて90式戦車4両とほか多数の装甲車両が北海道から九州の大分まで輸送されており、有事の際は北海道以外での運用も行われるとみられる。
90式戦車
▲民間の高速フェリーで輸送される90式戦車

装甲
90式戦車
車体及び砲塔は圧延鋼版による溶接構造で、前面部には複合装甲が取り入れられている。90式戦車の複合装甲はレオパルト2と同様に拘束セラミック式と呼ばれるタイプと言われており、セラミックスやグラスファイバーをチタンなどでサンドイッチ、圧縮したモジュールを積層した構造であるとされる。試験においては試作1号車に対し試作2号車の120mm滑腔砲にて射撃を行い、至近距離からAPFSDS及びHEAT-MP合わせて少なくとも車体前面に4発、砲塔前面に1発を直撃させたが、装甲は貫かれなかった。それどころか、機能に大きな影響がなかったことからそのまま自走して帰投したというほどである。当時世界最高クラスの威力を誇る120mm滑腔砲に耐える90式戦車の装甲は、当時としては世界最高水準の防御力を有していたと言えるだろう。

尚、74式戦車では避弾経始を有する曲面的な構成となっていたが、現在の戦車砲弾に対しては避弾経始により砲弾を弾くことは難しく、スペースを取る複合装甲とも相性が悪いことや、生産性にも配慮した結果、90式戦車の装甲板は垂直な構成となっている。
車体前面
▲複合装甲モジュールが封入されている車体前面

正面以外の防御能力としては、試験において砲塔側面は距離1kmからの35mmAPDSの直撃に、車体側面は14.5mm機関銃に耐え、頭上10mでの155mm榴弾の静爆試験にも耐えている。これらの試験結果及び溶接痕等から砲塔側面部は80mm程度の防弾鋼板、車体側面部は5mm程度のサイドスカート+35mm程度の主装甲、車体後部は25mm程度、上面は30mm〜40mm程度の単一の防弾鋼板であると推定されている。
車体側面部
▲車体側面装甲部溶接痕

しかしながら、戦車砲弾も日々進歩しており、現在ドイツで運用されているDM53APFSDSはレオパルト2A6の55口径の滑腔砲との組み合わせの場合、距離2kmで650mmの装甲貫徹力を有しており、90式戦車のDM33と44口径砲の組み合わせの場合より40%も貫徹能力が高い。また、ロシアの125mm滑腔砲用APFSDSの3BM-42Mでも距離2kmで600mm程度の装甲貫徹力を有するとされ、こちらも30%も貫徹能力が高い。90式戦車は優れた防御力を有しているが、将来的には決して安心は出来ないと思われる。

主砲
射撃を行う90式戦車
主砲は44口径120mm滑腔砲であり、ドイツのラインメタル社のRh-M-120を日本製鋼所がライセンス生産したものを搭載している。この砲はレオパルト2やM1エイブラムスなどにも採用されている西側第三世代戦車の標準砲とも言えるものである。90式戦車の開発にあたり国産の120mm滑腔砲も開発され、試作も行われたが、コストや運用実績などからラインメタルのものが採用された。

滑腔砲は従来のライフル砲のようにライフリングが切られておらず、砲身内が平滑となっている砲で、ライフル砲に比べ発射時の抵抗が大幅に小さく、高初速化を達成すると共に、砲身寿命を伸ばすことにも貢献している。従来ライフリングによる回転で安定させていた砲弾は、安定翼によって安定させる。90式戦車では国産戦車としては初めて滑腔砲を搭載した。

砲弾は同じくラインメタル社のDM33 APFSDS及びDM12A1 HEAT-MPをライセンス生産したJM33装弾筒付翼安定徹甲弾及びJM12多目的対戦車榴弾という2種類の弾薬を運用している。
使用弾薬
▲JM33 APFSDS(下)及びJM12A1 HEAT-MP(上)
DM33はレオパルト2用の砲弾として1987年から運用が開始されたAPFSDS弾薬で、90式戦車採用当時としては最新の弾薬であった。APFSDSは炸薬を持たない運動エネルギー弾で、タングステン合金の侵鉄体を有するダーツの矢のような弾体が高速で目標に直撃することで装甲を貫く。DM33は44口径砲で射撃した場合、初速は1650m/s、装甲貫徹力はゼロ距離で540mm、射距離1kmで500mm、射距離2kmで460mmの均質圧延鋼版を貫徹可能である。主に対戦車戦闘において使用される。

JM12A1多目的対戦車榴弾
▲JM12 HEAT-MP
DM12 HEAT-MPは炸薬の爆発によるエネルギーで装甲を貫徹する化学エネルギー弾で、初速は1140m/s、装甲貫徹力は射距離に関係なく600mm〜700mm程度とされている。また、炸薬の爆発により周囲に破片を飛散させるため、通常の榴弾代わりに対物、対人戦闘にも使用可能で、目標が不明確な場合とりあえずこちらが装填される。数値上の装甲貫徹力はAPFSDSより高いが、目標が爆発反応装甲や複合装甲を有する場合、有効なダメージを与えられない可能性が高く、対戦車戦闘では専らAPFSDSが使用される。

Rh120
▲120mm滑腔砲Rh120
74式戦車では主砲を直接ジャイロによるスタビライザーにて安定化させていたが、90式戦車では安定化させた照準機に砲身を追従させるダイレクター式を取っている。重い主砲を直接安定化させる従来方式に比べ、軽量な照準器のミラーのみを安定化させるだけでいいため、遥かに安定性が上がり、行進間射撃においても安定して照準出来るようになった。

主砲仰俯角は+10度〜-7度だが、油気圧懸架装置の姿勢制御と組み合わせることにより+15度〜-12度となり、74式戦車同様に優れた稜線射撃能力を有する。砲塔の旋回及び仰俯角動作は74式戦車同様に全電動式であり、被弾時の危険性が少ない。

自動装填装置

90式戦車の大きな特徴の一つとして西側第三世代戦車としては初めて自動装填装置を採用した点が挙げられる。90式戦車のものはベルトマガジン方式と呼ばれるもので、フランスのルクレールや韓国のK2が同様の機構を採用している。この方式は、砲塔後部のバスル部にベルトマガジンと呼ばれる弾倉が有り、ここに並べられた弾薬がベルトコンベアにより次々と砲身の後ろに運ばれ、ラマー(押出し機構)により装填するというものである。主砲が俯仰角動作を行なっていても、装填時には砲身は自動的に水平位置に復帰する。装填、射撃、排莢までの時間は1発約4秒、毎分約15発の射撃が可能で、これは旧ソ連のT-72の搭載するカセトカ式自動装填装置の約2倍の速度で、人力での装填よりも格段に早い。また、装填手が必要なくなったため、乗員は1名少ない3名となった。

自動装填装置の装弾数は9発×2段の計18発で、さらに予備弾として車体右前方の弾薬架に18発、砲手左側面に4発の計40発を搭載する。自動装填装置への装填の際は都度スイッチにて弾種を入力することで装填位置がコンピュータに記憶され、砲手が選択した弾種が自動的に装填される。自動装填装置への砲弾の搭載は通常砲塔上部左のハッチから行うが、車内から搭載することも可能である。また、緊急時にはハンドルを回すことにより手動で装填装置を動かすことが出来る。なお、自動装填装置のベルトマガジン部と砲塔戦闘室は隔壁により隔離されており、被弾などで万が一ベルトマガジンの弾薬が誘爆した場合でも、砲塔上部のブローオフパネルが吹き飛ぶことで圧力を外に逃がし、乗員を保護する。
自動装填装置
▲自動装填装置イメージCG

射撃統制装置&視察装置
視察装置

射撃統制装置には三菱、富士通、NECで共同開発されたデジタルFCSを搭載しており、レーザー測遠機や砲口照合装置、ストラップダウン式砲耳傾斜計、装薬温度センサー、横風センサーの情報を統合し非常に高い命中精度を誇る。

74式戦車がアクティブ式赤外線暗視装置を搭載していたのに対し、90式戦車ではパッシブ式熱線映像装置(サーマルイメージャー)を搭載しており、74式のように相手が赤外線暗視装置を装備しているとこちらの存在が分かってしまうということがない。熱線映像装置で捉えた目標は周囲のコントラスト差からFCSが処理し、捉えた目標を自動追尾することが可能で、ロックオン後は移動目標も追尾し続け、目標が一時的に障害物に隠れても砲身は計算された目標の未来位置を指向する。この自動追尾機能は世界に先駆けて実用化され、行進間射撃でも非常に高い命中精度を有する。実際採用当初、米国ヤキマ演習場にて射撃試験を行った際、行進間射撃にて3km先の目標に初弾命中を与え、米軍関係者を驚かせた。ちなみに90式戦車以外では1995年に登場したメルカバMk3Bが初めて自動追尾機能を有するFCSを搭載している。

砲手用サイト
▲砲手用サイト
砲塔上面右側には砲手用照準潜望鏡、レーザー測遠機、熱線映像装置からなる砲手用サイトが搭載される。箱型のサイトには2つの窓があり、向かって左側が光学視察系とレーザー測遠機、右側に熱線映像装置が組み込まれている。砲手用照準潜望鏡は照準系と視察系を持つ単眼式の光学サイトで、照準系は倍率は10倍(6.5°)俯仰角範囲は-7〜+10°でジャイロにより二軸安定化されている。視察系のウィンドウは照準系の上部にあり、倍率は1倍(水平18°)となっている。防盾の右側には倍率12倍の砲手用直接照準眼鏡があり、補助サイトとして使用される。レーザー測遠機はYAGレーザーを使用しており、測定距離は300〜5000mで±10mの精度で測定可能とされる。

操作部
▲砲手用サイト操作部(試作車)
砲手席と車長席には7インチの白黒CRTディスプレイが有り、ここに熱線映像装置の映像が表示される。熱線映像装置は広(7.6°×10.1°)、狭(2.7°×3.6°)、拡(1.3°×1.8°)の3段階の視野切り替えが可能。

車長用サイト
▲車長用サイト
砲塔上面左には車長用照準潜望鏡を備える。このサイトは擬似双眼のパノラマ式で、倍率は3倍(21°)と10倍(6.5°)の切り替え式で、旋回可動範囲は前方±90度、俯仰角範囲は-7〜+10°となっている。本サイトは索敵及び照準に使用し、砲手の目標をオーバーライドすることが可能で、車長席から射撃を行うことも可能となっている。

車長用の独立した可動式サイトは74式戦車にはなかった装備であり、これにより砲手が目標に照準を行なっている間でも、車長が次の目標の索敵を行う「ハンター・キラー」運用が可能で、脅威度の高い新たな目標を発見した場合車長が直接射撃することも可能となっている。暗視機能は有しておらず、夜間や悪天候時は砲手用サイトの熱線映像装置を使用することとなるため、夜間悪天候時はハンター・キラー運用が出来ない。また、この世代の戦車では車長用サイトは全周旋回式が主流となりつつあったが、本車のパノラマサイトは限定旋回式のため視察範囲が前方180°であり、若干劣っている。

車長用サイトの後ろの車長用キューポラには、8つの倍率1倍のペリスコープが搭載され、全周囲を見渡すことが出来る。

操縦席には3つのペリスコープがあり、中央のものには操縦用のナイトビジョンゴーグルを取り付けることが可能なほか、74式戦車には無かったワイパーも搭載された。

副武装&防御装備

副武装として砲塔上部に12.7mm重機関銃M2、主砲同軸に74式車載7.62mm機関銃を搭載しており、この辺りは74式戦車と全く同じである。

ブローニングM2重機関銃はその口径12.7mm(50口径)からキャリバーフィフティとも呼ばれており、1920年代に開発された機関銃でありながら、現在でも生産が続けられているベストセラー重機関銃である。自衛隊の国産戦車においても住友重工にてライセンス生産が行われ、61式戦車から10式戦車に至るまで四世代に渡って採用されている。装弾数は600発で、発射速度は毎分600発、初速835m/s、有効射程は最大で約1800mとなっている。弾種は普通弾、徹甲弾、曳光弾等があるが、徹甲弾を使用した場合距離500mで20mm以上の装甲板を貫徹することが可能。
12.7mm重機関銃M2
▲12.7mm重機関銃M2

74式車載7.62mm機関銃は62式7.62mm機関銃をベースとして車載化したもので、銃身が細く信頼性の低かった62式7.62mm機関銃と比べ重量制限がなくなったことにより、非常に堅牢なものとなっており、信頼性が大幅に向上している。74式戦車から採用され、10式戦車にも採用されている。装弾数は予備弾を含め4500発で、発射速度は毎分1000発または毎分700発の切り替え式。また、砲身の冷却にブロアによる強制冷却方式を採用しており毎分700発の発射速度で20〜25発の連続射撃を2〜3秒間隔で3分以上行うことが可能。
74式車載7.62mm機関銃
▲74式車載7.62mm機関銃

砲塔上面前部にはレーザー検知装置を備えている。これは74式戦車には無かった装備で、照準にレーザー測遠機を使用するのが一般化した現代では、敵の攻撃を事前に検知するためにも重要なものである。90式戦車のレーザー検知装置は3つの光学窓があり、砲塔正面約180度からのレーザー照射を検知する。また、砲塔側面には76mm発煙弾発射筒を片側4基づつの計8基を有しており、レーザー検知装置と連動して瞬時に車体前方に煙幕を張ることが可能。発煙弾は赤燐を主成分としたもので、スウェーデンのFFV社のものをライセンス生産し使用している。
レーザー検知装置
▲レーザー検知装置

ハイブリッド懸架装置
90式戦車
90式戦車の懸架装置は片側6輪の内の前後2輪が74式戦車同様の油気圧式サスペンション、中央の2輪はトーションバーサスペンションというハイブリッド構成になっている。74式戦車同様に油圧制御により車体を前後±5度、車高を+170mm〜-255mmの範囲で可動させることができ、主砲の俯仰角を広く取ると共に、起伏の激しい日本の地形で車体を隠蔽させながらの射撃を容易にしている。左右の可動は出来なくなっているが、左右の傾き(砲耳傾斜という)による弾道のズレはFCSの発達により容易に補正出来るようになったためである。

駆動系
潜水渡渉を行う90式戦車

エンジンは三菱重工製のV型10気筒液冷ディーゼルの10ZG32WTを搭載し、各バンク1基ずつのターボチャージャーとルーツブロワ式のスーパーチャージャーの2段加給により低回転域から高回転域まで高い性能を発揮する。排気量は21500ccと74式戦車と同じだが、出力は74式戦車の2倍以上の1500馬力を発揮する。

尚、90式のエンジンは74式戦車同様に2ストロークのディーゼルエンジンを採用しているが、2ストロークのエンジンは排気量あたりの出力が大きいというメリットが有り、小型化が優先されたため採用されたと思われる。デメリットとしては燃費が悪いことや排気がクリーンでないということが挙げられ、レオパルト2など諸外国においては4ストロークのディーゼルエンジンが一般的である。

エンジンのスペックとしては最大出力は15分定格で1500馬力/2400rpm、最大軸トルクは450kgf・mで、0発進で200mまでの加速性能は20秒となっている。最高速度は70km/hで、出力重量比は29.9hp/tと世界最高水準である。尚、冷却ファンの駆動やトランスミッションの損失によりスプロケット出力(最終軸出力)は900馬力程度とされる。

トランスミッションは三菱重工製のMT1500で、前進4段、後進2段のオートマチックトランスミッションである。ロックアップ機構付きトルクコンバーターと遊星歯車機構がセットになっており、ハイドロスタティック式でスムーズな旋回が可能となっている。トランスミッションとエンジンは一体化したパック方式となっており、30分程度で交換が可能。燃料は基本的に軽油を用いるが、JP-4ジェット燃料でも動作する。
90式戦車
▲急制動を行う90式戦車
また、制動性能も非常に高く、最大速度でも10m以内、時速50km/hなら3mで停止できるとされ、当初胸部を打撲する車長が多かったことから一部では「殺人ブレーキ」などと呼ばれていた。

燃料搭載量は1272Lで、航続距離は整地での45km/hの巡航において340kmとされており、ここから計算すると燃費は267m/Lとなる。これは燃費が悪いことで有名なガスタービンエンジンのM1A2の243m/Lよりは良好だが、同じディーゼルエンジンのレオパルト2が435m/Lなので燃費はあまり良いとは言えない。

吸気用シュノーケルと排気用ダクト、砲口蓋等からなる潜水補助キットを取り付け、各箇所を密閉することで水深2mまでの河川などを潜水渡渉することが可能。


車内装備等
NBC防護装置はライン式(個別式)であり、乗員の防護服に直接浄化空気を送り込む方式となっている。74式戦車のような車内全体を与圧する方式の場合、主砲の閉鎖機に砲尾栓が必要なため主砲が撃てず、戦闘能力が大幅に低下する他、各種ハッチの完全閉鎖やシーリングが必要で、準備に非常に手間がかかり実用的でないという問題があるため、90式戦車においてはライン式が取られたものとみられる。

車内には冷房は無く、戦闘室、操縦室の双方にエンジン熱を利用した温水式の暖房装置を備えている。

車内には乗員用の自衛武器として短機関銃と小銃、手榴弾、信号拳銃を備える。 戦闘室、動力室にはハロンガスを使用した自動消火装置が搭載されており、その他携帯式の消火器も備えられている。
90式戦車内部構造図
▲内部構造図
アップデート等
90式
90式戦車は大きなアップデートは施されていないが、下記のサブタイプがある。

初期生産型:最初の生産型。B型登場以降も特にA型といった名称は付加されていない。
90式戦車(B):92式地雷原処理ローラーを搭載できるようにしたタイプで、車体前面に取り付け用アタッチメントが付加され、操縦席に操作パネルが追加されている。少数のみが改良されたものと思われる。1993年制式化。
92式地雷原処理ローラー
▲92式地雷原処理ローラー

また、一部の車両においてC4Iシステムの戦車連隊指揮統制システム(T-ReCs)端末の搭載が開始されており、端末を搭載する他の90式戦車や10式戦車、普通科部隊と情報を共有が可能となり、戦闘能力を向上させている。
90式戦車(B)
▲90式戦車(B)

バリエーション
90式戦車回収車
90式戦車回収車
90式戦車回収車は90式戦車の車体を流用して作られた戦車回収車であり、90式戦車の導入に伴いそれまで配備されていた78式戦車回収車の後継として開発された。

車体前面に搭載されているメインの油圧ウインチは90式戦車の重量である50tの牽引に対応し、74式戦車なら横向きにでも引っ張ることが可能。ウインチ単体での牽引能力は30t程度とされ、車体後部左に搭載される滑車を動滑車として利用してダブルラインで牽引することで、2倍の牽引能力を発揮する。

車体上部のクレーンは25t以上の吊り上げ能力を有しており、パワーパックや砲身の交換、砲塔と車体を分離する際などに使用される。機関室上部には90式戦車のパワーパックや交換用の砲身を搭載することが可能な架台も備える。車体後部には牽引用のフックがあり、90式戦車を牽引して走行することが可能となっている。サスペンションは90式戦車とは異なり全て油気圧式サスペンションとなっており、上下の姿勢制御も可能となっており、ウインチやクレーン使用時は車高を最低まで下げて運用する。自衛用としてM2 12.7mm機関銃と発煙弾発射機を備える。平成22年度までの間に約30両が調達された。


スペック
製造 三菱重工株式会社(砲塔、車体) 日本製鋼所(120mm砲)
全長 9.755m
車体長 7.55m
全幅 3.33m
全高 2.335m
全備重量 50.2t
エンジン 10ZG32WT型2サイクルV型10気筒水冷ターボディーゼル 1500馬力/2400rpm
最大速度 約70km/h(整地)
航続距離 約340km
登坂能力 60%
渡渉水深 1m(渡渉具2m)
主武装 120mm滑腔砲Rh-M-120x1(携行弾数40発)
副武装 12.7mm重機関銃M2x1(携行弾数600発)
74式7.62mm機関銃x1(携行弾数4500発)
4連装76mm発煙弾発射機x2
乗員 3名

Photo
Japan Ministry of Defence

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