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F/A-18E/F SuperHornet


F/A-18E/FスーパーホーネットはF/A-18ホーネットをベースとして大幅な能力向上を図ったアメリカ海軍の艦上戦闘攻撃機である。愛称はスーパーホーネット(スズメバチ)だが、非公式な愛称としてライノ(サイの略語)とも呼ばれる。

ベースとなったF/A-18ホーネットはF-4ファントムとA-7コルセア双方の代替機としてマクダネル・ダグラス(現ボーイング社)によって開発された機体である。
ハイローミックスの思想の基にアメリカ空軍がF-15の補佐としてF-16を導入したが、海軍でも同様にF-14を補佐する機体を望んでいた。そこでF-16と争い空軍で採用されなかったノースロップYF-17を基にマクダネル・ダグラスと共同でF/A-18Aホーネットが開発された。

F/A-18Aはその後も改修が続けられ副座型のF/A-18Bやアヴィオニクス改良型のF/A-18C/Dが登場し長い間海軍の主力戦闘機として活躍していたが、F-14やA-6の後継としては明らかに能力不足で、特に航続距離不足やペイロード不足が指摘されていた。

そしてA-6の後継機になるはずだったA-12の開発中止を受けて、F/A-18C/D型をベースに大幅改修を施したF/A-18E/Fスーパーホーネットが開発されることとなった。また、この機体の登場にともなってF/A-18A〜Dはレガシーホーネットとも呼ばれるようになった。
1992年に開発が承認され、1995年11月29日に初飛行、1999年11月17日から実戦配備が開始された。

2005年の会計年度から調達が開始され始めたF/A-18E/FブロックUではAN/APG-79 AESAレーダーやATFLIR、JHMCSAIM-9Xの運用能力などのアップグレードが施され、大幅に戦闘能力が向上している。

機体

F/A-18C/Dからの主な変更箇所として胴体を86cm延長し主翼面積を25%、ストレーキの面積を35%、垂直尾翼面積を15%増大させている。これによりストレーキや垂直尾翼内にまで機内燃料タンクを増やすことで燃料搭載量を38%増大させている。水平安定板面積は36%、方向舵面積は54%、作動範囲は10度増えているため、より一層舵の効きが強くなっており、機動性の向上に貢献している。

また、ストレーキの大型化により40度を超える大迎え角の飛行も可能となった。そのため、最大負荷加重が7.5Gと他機種と比べて小さいにもかかわらず、低速での格闘戦能力ではF-14やF-15、F-16等をも上回っている。

▲大型のストレーキにより高迎え角での機動が可能となった

ただ、F/A-18A〜Dの頃からストレーキの空気抵抗により加速性能が低いことが指摘されており、スーパーホーネットになってさらに大型化し、機体重量の増加も重なり加速性能や最高速度、上昇性能など全体的に飛行性能が悪化している。また、高迎え角での操縦性と低速時の安定性は改善したが、機体の大型化と重量増加でリカバリーにかかる時間が増大している。

機体構成は重量比でアルミニウムが30%、鉄15%、チタニウム21%、CFRP19%、その他15%となっている。


▲F414-GE-400
エンジンはF404-GE-402からF414-GE-400に換装された。このエンジンはF404と比較して推力が20%以上強化されており、推力重量比は7.8:1からF-22のF119と同等の9:1にまで向上している。ペイロードは30%増加し8トンもの兵装を装備出来るようになった。パイロンも2ヶ所増えて11ヶ所になったため機外燃料搭載量も増加した。燃費は悪化しているが機内燃料の増加のため航続距離は最大40%増加している。

エアインテイクはエンジン換装による吸気量増大とステルス性を意識し楕円形から平行四辺形に変更されており、他にも各所にRAM(電波吸収塗料)が施されている。また、インテイク内のエンジン吸気ファンの手前にはレーダーブロッカーが装備されており、吸気ファンからの電波反射を軽減させている。ステルス性を意識したとはいえ、多少の設計変更では全体のステルス化は到底無理なので、正面からのみステルス性が高められている。これにより正面のRCS(レーダー有効反射面積)は1平方メートル程度となっている。

▲上がF/A-18E、下がF/A-18C

これらの改修により機体サイズはF/A-18A〜Dよりも一回り大きくなっている。改修型とはいえF/A-18C/DとF/A-18E/Fの共通部分はコックピット周辺の1割程度だと言われており、性能的にもほとんど別物の機体と考えていいだろう。


レーダー&センサー

▲AN/APG-73
レーダーはF/A-18A〜Dに搭載されていたAM/APG-65の発展型であるAN/APG-73を搭載しており、APG-65の3倍の処理能力を持ち、記憶容量は8倍に増加している。空対空モードではベロシティ・サーチ(VS)、レンジ・ワイル・スキャン(RWS)、トラック・ワイル・スキャン(TWS)、単一目標追尾(STT)、空戦機動(ACM)、機銃照準等のモードを持ち、最大探知距離はVSモードで148kmとなっている。TWSモードではレンジが85km以内で最大10目標を追尾し8目標を同時攻撃可能な能力を有する。74km以内ではレイド・アセスメント能力も有する。 空対地モードではリアルビーム・マッピング、ドップラー・ビームシャープニング、地形回避、洋上探知・識別モードがあり、合成開口レーダーによる地上画像の作成も可能。


▲AN/APG-79

F/A-18E/FブロックUからはAESA(アクティブ電子走査アレイ)式のレーダーであるAN/APG-79が搭載されている。アンテナアレイには1000個以上のアンテナモジュールが搭載されており、斜め上を向けることで敵レーダー波を正面に送り返すのを防いでいる。

APG-73と比較して大幅に能力が向上しており、低RCS目標や空対空ミサイルにも対応し、複数目標の処理能力は約2倍、探知距離は2〜3倍に向上しているとされる。ECCM能力も備え、リアルビーム・マッピング、合成開口レーダー、空対空捜索・追跡、パッシブ、海上捜索、地上移動目標識別、複数目標追尾などのモードがある。

また、空対空・空対地モードを同時使用するインターリーブ機能も持っており、副座型のF/A-18Fでは前席と後席でまるで二つのレーダーがあるかのように別々の目標を探知することも可能である。

▲APG-79のSAR画像

レーダーに次ぐ重要なセンサーとしてF/A-18C/Dからロッキード・マーチン社製のAN/AAS-38B ナイトホークFLIR・照準ポッドを運用していたが、F/A-18E/FブロックUからは大幅に性能が向上したレイセオン社製のAN/ASQ-228 ATFLIR(発達型目標指示赤外線前方監視装置)ポッドが搭載された。

▲AN/ASQ-228 ATFLIRポッド
このATFLIRポッドには640×480のInSbフォーカル・プレーン・アレイを有する中波赤外線FLIR、レーザー照射・測距装置、光学センサーユニットが納められており、高解像度画像による幅広い識別能力や、15000m以上の高々度及び74km以上の長距離からの目標捕捉・目標指示が可能となり、スタンドオフ距離からの高い精密爆撃能力を得ることに成功している。


2008会計年度から調達される機体では480ガロン増槽の先端にF-14Dにも装備されていたAN/AAS-42 IRSTを搭載したIRSTポッドを運用出来るようになる予定である。燃料タンクの前方1/4程がIRSTのスペースとなり、残りの部分には330ガロンの燃料を搭載する。

▲増槽の先端に装備されたAN/AAS-42 IRST

コクピット&アヴィオニクス

▲デジタル化されたコクピット

アヴィオニクスは90%がF/A-18C/Dと共通性を持っているが、コクピットの表示装置はCRTからタッチパネル式のカラー液晶ディスプレイに変更されている。発展型のブロックUでは統合ヘルメット装着キューイングシステム(JHMCS)も搭載され、AIM-9Xサイドワインダーの運用が可能となる。

操縦系統にはデジタル・フライ・バイ・ワイヤが採用されており、F/A-18C/D同様に発着艦を自動操縦で行うことが可能である。また、水平尾翼が片方破損しても自動的に水平飛行状態を維持出来るシステムを有している。

複座型のF/A-18Fでは前後席に互換性があり、後席からでも操縦が可能となっており、練習機としても使用される。通常は後席に兵装システム士官(WSO)が搭乗し、対地攻撃ミッションや空中給油機として運用される。ブロックUでは後席コクピットはAdvanced Crew Station (ACS)と呼ばれるものとなり、8×10インチの大型ディスプレイが搭載される。 また、LOALにより発射した2発のAIM-9Xを前席と後席で別々に異なる機体へ誘導することも可能となる。

▲EA-6Bに給油するF/A-18F


航法システムとしてはAN/ASN-139 GPS付きリング・レーザー・ジャイロ慣性航法装置とAN/ARN-118戦術航空航法装置(TACAN)を備える。

ブロックUから装備されるUSQ-140(V)MIDS-LVT(多機能情報分配システム低量ターミナル)ではリンク16によるデータリンクが可能となっている。例えば、自機が目標を捕らえてなくても友軍機からの目標情報をデータリンクで受け取り、レーダーを使うことなく攻撃する事が可能となる。


兵装&防御システム
固定兵装として機首にM61A1バルカン砲を搭載し、11ヶ所あるパイロンにはAIM-9サイドワインダーAIM-120AMRAAM等の空対空ミサイルから各種通常爆弾や誘導爆弾、スタンドオフ兵器、増漕、各種ポッド類など米軍の使用するほとんどのウェポンを搭載可能で、その兵装組み合わせパターンは30種類以上に及ぶとされており、マルチロールファイターとして様々な作戦に柔軟に対応できるのも大きな特徴である。また、A/A42R-1空中給油ポッドを搭載することで空中空輸機として、AN/ASD-12 SHARP戦術航空偵察ポッドを搭載することで偵察機としての使用も可能。


防御用機材としては、AN/ALR-67(V)3レーダー警戒受信機、AN/AAR-57共通ミサイル警報装置、AN/ALQ-165機上自己防御装置、AN/ALE-47チャフ・フレアディスペンサーなどを搭載する。特にAN/ALR-67(V)3レーダー警戒受信機は通常のレーダーの他、早期警戒レーダー、レーダー誘導ミサイル、ミリ波など40GHzまでの様々な周波数帯に機体全周位で対応し、方位の他、レーダー出力からの位置の割り出しや識別が可能となっている。また、HARM対レーダーミサイルへの目標設定にも対応しF-16のようにHTSポッドなどを搭載せずにSEADミッションが可能となっている。ブロックUにおいてはAN/ALQ-165に代わってBAEシステムズが開発したAN/ALQ-214統合電子防御対抗手段が搭載され、曳航式デコイとの組み合わせにより高い生存性を実現する。

また、レイセオンが開発したAN/ALE-50曳航式デコイの装備も可能で、1999年のユーゴスラビア攻撃時にB-1Bが実戦で使用し5発のSAMを回避している。F/A-18E/FブロックUからはBAEシステムズが開発した新型のAN/ALE-55光ファイバー曳航式デコイが搭載可能となった。ALE-50では事前にプログラムされた囮電波を出すことでミサイルを回避するというものだったが、ALE-55ではAN/ALQ-214と連動して脅威電波に対応した囮電波を発信出来るようになっている。これによりALE-50では対応出来なかった未知の脅威にも対応することが出来るという。

▲AN/ALE-50(左)とAN/ALE-55(右) 曳航式デコイ

EA-18G Growler


バリエーションとしてEA-18Gグロウラーが開発されており、2006年8月15日に初飛行した。EA-18Gは複座型のF/A-18FをベースにEA-6Bプラウラーの後継機として開発された電子戦機で、基本的にはEA-6Bと同等のECMシステムを備える。

搭載されるAN/ALQ-99TJS戦術電波妨害システムはシステム用統合受信機(SIR)のアンテナ群と、ジャマー2台・送信アンテナ・発電用ラムエアタービンを内蔵した430kgの外装ポッドからなる。このシステムでは9バンドの周波数帯域に対応しており、ユニバーサル・エキサイターにより1つのポッドで2つの周波数帯に同時妨害をかける事が出来る。


他には機首に装備されていたM61バルカン砲が撤去され、AN/ALQ-218(V)2広周波数帯受信機が搭載された。11ヶ所ある搭載ステーションのうち5ヶ所がECMシステムに使用されており、主翼端のランチャーの代わりにAN/ALQ-218のアンテナを、主翼下にAN/ALQ-99の高周波用ジャミングポッド、胴体下に低周波用ジャミングポッドを搭載する。残りの6ヶ所には増漕とAGM-88HARM高速対レーダーミサイル、自衛用のAIM-120AMRAAMやAIM-9サイドワインダーが搭載される。

また、EA-6Bに無かった機能として、ジャミングを行いつつUHFによる正常な通信を可能とする、干渉キャンセルシステム(INCANS)が搭載されており、妨害中でもリンク16による味方との目標情報の送受信などを行うことが出来る。


後席にはECMO(電子妨害士官)が搭乗するが、EA-6Bでは4人乗りであったのに対しEA-18Gは2人乗りで、ECMOは3人分の作業を1人で行うことになる。これに対しボーイングでは「合理的でワークロードを減らすコクピットシステムにより、複座であってもEA-6Bと同等かそれ以上の作戦行動を可能にした」としている。

2007年9月24日に量産初号機がアメリカ海軍へ引き渡され、2008年6月4日には部隊への配備が開始されており、2009年9月にIOC(初度作戦能力)を得ている。


F/A-18E/F Super Hornet International Road Map
ボーイング社は2011年2月8日インド航空祭にてスーパーホーネット用の新しいオプション「インターナショナル・ロードマップ」を発表し、同会場ではモックアップが公開された。これは2010年7月に開催されたファンボロー航空ショーにてCGイラストが発表され、非公式にサイレントホーネットと呼ばれていた構想が具現化したもので、スーパーホーネットにさらなる戦闘力を与えるものである。


▲2010年に公開されていたCGイラスト

具体的にはまずコンフォーマル・タンク(CFT)の搭載により航続距離の向上が図られる。この燃料タンクはF-16のCFTと同じように機体背部に取り付けられるもので、片側につき1500lbの燃料を搭載し、2つで3000lbの燃料増加となる。これにより戦闘行動半径は10 %向上するという。また、ボーイング社によればCFT搭載による抵抗は搭載前から全く増加しておらず、逆に重心位置が変わることにより尾翼によるトリムが不要となるため最高速度や加速性能が上昇するとも言われている。

▲コンフォーマル・タンク(CFT)

次に挙げられるのが外装式のウェポンポッドの搭載である。このポッドにはAIM-120C AMRAAMならば4本搭載することが可能な他、GBU-39 SDBなら4発、Mk-82 500lb爆弾サイズなら2発、Mk-83(1000lb)やMk-84(2000lb)サイズの爆弾なら1発搭載することが可能である。

▲ウェポンポッド

これにより兵装を外装した場合に比べステルス性が向上する他、抵抗の減少により航続距離も向上するという。1つのポッドに搭載可能な重量は2000lbまでで、スーパーホーネットにはこのポッドを最大3基搭載することが可能とのこと。

また、機首下には新たにIRSTが搭載され、コクピット後方にはミサイル警戒用センサーが増設され、機体全周囲を警戒可能となるという。

コクピットはF-35のような、19×11インチのタッチパネル式大型液晶ディスプレイを搭載した次世代型コクピットとなる。ちなみにこれは一般的なPC用22インチワイドモニターとほぼ同じ大きさで、戦闘機用ディスプレイとしては最大級である。このディスプレイには各種センサーの情報を分割表示できる他、3Dマップにより周囲の状況を表示することが出来、AWACSやイージス艦が捕捉した最新情報などもネットワークを介して表示することができる。ディスプレイはマルチタッチ対応で、iPadのように2本の指を当ててズームすることが可能だという。

エンジンはファンや燃焼室を一新したGE-F414 Enhanced Performance Engine(EPE)に変更され、従来よりも推力が 20%増加する。

ボーイング社では2011年内にコンフォーマル・タンクの風洞実験を行い、提供開始時期は2015年以降になる予定だという。

スペック(F/A-18E)
製造 ボーイング
ノースロップグラマン
全長 18.38m
全幅 13.62m
全高 4.88m
主翼面積 46.45m2
空虚重量 13.9t
最大離陸重量 29.9t
エンジン ゼネラル・エレクトリック F414-GE-400(ドライ時67kN、A/B97.9kN)×2基
最大速度 マッハ1.6
燃料搭載量 内部:8103L(6530kg)
外部:1817L(480ガロン)増槽×5
航続距離 3054km(AIM-9×2、480ガロン増槽×3)
戦闘行動半径 1475km(AIM-120×4、AIM-9×2、480ガロン増槽×3)
280km(AIM-120×4、AIM-9×2、480ガロン増槽×3、2時間空中警戒)
1467km(AGM-84×2、AIM-120×2、AIM-9×2、480ガロン増槽×3)
722km(1000lb爆弾×4、AIM-9×2、480ガロン増槽×2)
実用上昇限度 15240m
最大兵装搭載量 8051kg
着艦可能最大兵装搭載量 4082kg
主武装 M61A1 20mmバルカン砲(520発)
AIM-9 Sidewinder
AIM-9X Sidewinder
AIM-7 Sparrow
AIM-120 AMRAAM
AGM-65 Maverick
AGM-84 Harpoon
AGM-84K SLAM-ER
AGM-88 HARM
AGM-123 Skipper
AGM-154 JSOW
AGM-158 JASSM
各種クラスター爆弾
GBU-10/12/16/24 Paveway レーザー誘導爆弾
GBU-29/30/31 JDAM
Mk82/83/84 通常爆弾
Mk82 Snakeye
CBU-72 FAE
Mk60/65 機雷
LAU-10 Zuni 5インチ ロケットランチャー
LAU-68 Hydra-70ロケットランチャー
B-57/61戦術核
採用国 アメリカ
オーストラリア
乗員 1名
最大負荷加重 +7.5/-3.0G

Photo
U.S.Navy
Raytheon
BAE Systems
Boeing
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